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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光11・苛立ち

日が暮れた頃、ジェイはもう住み慣れた小さな家のドアを開けた。
リビングのソファに、横になって眠る藍色の髪の少女の姿が目に映る。
「おかえり」
少し離れたダイニングテーブルで、ジェレミーが端末を叩いていた手を止めた。
テーブルの上には、デザートが乗っていたであろう皿が数枚、積み重ねて置いてあった。

甘々だな。

苦笑するパライバの瞳に、アクアマリンの青年は笑って言った。
「その皿の数だけ、魔法陣を覚えたよ」
「格段の進歩だな」
笑みをこぼして、ジェイは台所でグラスに水を汲んだ。
水を注がれたグラスを見つめると、さっきまでの柔らかい表情が、碧い瞳から瞬時に消える。

「まだマーシアと会う氣にならないか」
突然出てきた名前に、ジェレミーは一瞬戸惑った。
「……もう少し、時間がほしい」
ジェレミーの口から出た言葉に、碧い瞳の青年は小さくため息をついた。

彼女も同じことを言っていた。

神殿の修復を中座し、休息の為にひとまず家に戻ろうとしたときだ。
一緒に帰ろうと誘うジェイの言葉に、マーシアは首を振った。

「まだ、あの家に行く勇気が出なくて……もう少し、時間が欲しいの」

寂しげな表情を残して、彼女は再び、泉のほとりへ帰っていった。

この二人の間に立ちはだかる壁は「悔恨」か、それとも「恐れ」か。
お節介だと思いつつ、彼は言わずにいられなかった。
「彼女はもう大丈夫だ」
ジェイの言葉に、アクアマリンの青年は小さく頷いた。
「待ってるぞ」
「……分かってる」
端末から浮かぶ、光の文字を見つめたまま、ジェレミーはテーブルに肘をつき、思い詰めるような表情になった。

……どんな顔をして会えばいい?

彼女の過去から、悲しみと苦痛を呼び起こしてしまいそうで、面と向かって彼女と会うことなど出来ない。
とはいえ、メイシンを通して、彼の存在を、マーシアも充分感知しているのだが。

アクアマリンの瞳が揺れ動くのを、ジェイもまた、沈むような気持ちで見つめてから、グラスの水を一気に飲み干した。
一息つくと、まっすぐにメイシンが眠るソファへ歩み寄り、深い寝息を立てる少女の身体を抱き上げる。
「そこで寝かせててもいいよ?」
ジェレミーの言葉に、ジェイはニヤリと笑って答えた。
「こいつは俺のものだから」
パライバの瞳の奥に、ジェレミーとは対極の光が浮かび上がる。

「彼女」の前では、絶対に見せない「光」。
それが自分への挑発だということは、痛いほど分かる。だからこそ、彼は胸の奥でこう言わずにいられなかった。

君はいつまで、その「光」を隠し通すつもりだい?

寝室へ続く廊下のドアをくぐる彼を、目だけで追いながら、ジェレミーは苦笑した。
「……ごちそうさま」
殴られないようにね、と、小さく呟いた声は、おそらくジェイの耳には届かなかった。

翌朝。再び始まった「魔法陣講座」の講師は、前日に続き、ジェレミーが担当した。
ジェイは神殿の修復にしばらく専念するらしく、メイシンが目を覚ます頃には、すでに彼は家を出てしまっている。

何故か氣に食わない。

メイシンは、耳に陣の説明が入ってこないほど苛立っていた。
「……ねぇ」
アクアマリンの優しい瞳を、上目遣いで睨み付け、少女は静かに言った。
「あんたたち一体、何やってんの?」
「……え?」
少女の唐突な言葉に、青年は戸惑う。畳み掛けるように、メイシンは詰め寄った。
「誤魔化さないでよ。あたしに黙ってなんかやってるだろ?」

……ひょっとして、神殿のことか。

メイシンには何も告げていなかったのだが、マーシアと魂レベルで繋がっている彼女には、隠していても何か感じるものがあるのだろう。

「なんであたしだけ、蚊帳の外なんだよ」
「僕だって蚊帳の外だよ」
にこにこと答える青年の明るい返答を聞いて、メイシンの胸の中で、我慢計の針が振り切れた。
「ひょっとしてこれ、あたしを足止めするためにやってんの?」
「何言ってるの」
少女の言葉に驚いて、青年の顔色が変わった。

──やっぱそうじゃん。

メイシンはいても立ってもいられず、椅子から立ち上がり玄関を飛び出した。
「ちょっと待って!」
慌てて、ジェレミーが後を追いかける。

走りながら、神殿の前まで一気にポータルを繋いだメイシンは、先日見た白い廃墟が、光の帯に包まれているのを見て、言葉なく立ち尽くした。
光の波動に、見知った「二人」のエネルギーを感じる。

何やってんの……!

血相を変えて、少女が神殿を包む光の中に飛び込もうとした瞬間、後ろから腕を掴まれた。
追いついたジェレミーが、彼女を引きとめようと握った手に力を込める。
少女は神殿の奥に向かって、居るであろう彼の名を叫んだ。
「佐守!」
「メイシン!」
いつになく大声を上げて、ジェレミーは少女の気勢を制す。
メイシンは藍い髪を振り乱し、噛み付くように振り向いた。
「あんた平気なの!? あそこにマーシアがいるの分かってて、なんで黙ってんの!」
「僕じゃ無理なんだよ!」
思わず叫んでから、自分の言った言葉に、青年は何故か愕然とする。

この神殿に関する限り、過去に関わったマーシアと、ジェイの中に居る「佐守」の魂が復旧しなければならない。
理屈は分かっている。

だが、彼の愛する彼女たちは、いつも自分ではなく、「彼」の方ばかり見ているような氣がしてならなかった。

まだ青年の手を振り切ろうとする少女の腕を、更に強く握り締めて、ジェレミーは腹の底から呟いた。

「僕じゃ駄目なのか……?」

アクアマリンの瞳の中の光彩が、不安定に揺れているのに氣が付いて、メイシンは我に返った。
「……なにいってんの……」
呆然と呟く少女の胸を、青年の不安が横切った。

(頼むよ……否定しないでくれ……)

心話と共に、青年の感情が流れ込んできて初めて、少女は彼の心中を察することが出来た。
「ごめん……そんなつもりじゃなくて……だって……」
何の説明もなく、彼女にとっては突然に始められた「エネルギーワーク」に戸惑ったのだ。
複雑な胸の内は、この人も同じ。
メイシンは、自分を掴む青年の腕を抱きしめた。

今はこの人の支えになろう。

彼が自分の「守護天使」だと言ってくれた、その涙の感情を抱きしめながら、メイシンは呟いた。

「帰ろう……」

(ごめん、ジェレミー……)
少女の心話が胸に染みたのか、青年はメイシンの華奢な身体を抱きしめた。

神殿の光の波に共鳴するかのように、彼らの姿もまた、光を帯びていった。


メイシン、落ち着け。頭がぼわんぼわんして、ちゃんと表現出来てるかわかんねーよ。orz
時間を置いて、後でもう一回見直しますけど。。。

ていうかあのぉ。。。こないだから、台詞がおかしいよ、あんたたち。orz
安いメロドラマみたいじゃないかよぉぉぉ。。。。(T▽T)

ジェレミーとジェイ君のやりとり。。。細かい描写を入れていくうちに、なんだか。。。orz すいませんねぇ、もう。降りてきたとおりの台詞なんですけどねぇ。。。思えば、この辺からすでに、ユーリ君「浮上」してたのですね。(笑)

ふと。記憶が「解凍」されれば、魔法陣の覚え直しなんてしなくてもいいのかな~?
なんて、ふと思ってしまったです。
「覚え直し」って言ってる辺り。。。。やはりそうなのかな、と。

次回? いま頭がメイシンモードなんで、ちょっと分かりません。。。orz

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