カテゴリー
風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光2・致命陣

結界の中で、稲妻が轟く。

マーシアと分かれたメイシンは、青年を連れ出し、薔薇の咲き誇る庭のずっと向こう、彼らの家から離れた場所で、「稽古」をつけてほしいと言い出した。

彼女はいつの間にか、服も白いワンピースからずっと身軽になり、短いチュニックに短いパンツを身に着けて、意気揚々としていた。

ジェイが張り巡らせた結界の中で、ひたすら剣を重ねる。
華奢な腕で剣を振り上げる少女は、傍目にもとにかく楽しそうでならない。
「あたし、佐守と打ち合うの初めてだな」
過去の名前で呼ばれた青年は、思わず苦笑した。
「そうか? あっただろ」
「ないよー」
のんきな会話の間にも、鋭い刃先はお互いの剣にぶつかり、高い刃音を響かせる。

打ち合いは互角。
いや、ジェイの方が攻めているものの、決定打を打ち込めないようにも見えた。
その彼の、思考パターンを読むように、少女の顔に鋭い笑みが閃く。
「あのさぁ。何も考えないほうが、当たるよ」
言うや否や、一瞬の間に集中力を上げた少女は、青年の剣を掻い潜り、彼の鼻先へ、自分の剣を突きつけていた。
「……ね?」
少女の口元が、ニヤリと笑う。

パライバトルマリンの瞳を見開いて、その白い切っ先を凝視した青年は、一瞬だけ息を飲む。
「……そりゃ……お前は野生の勘で戦ってるから」
「野生の勘って……人を野獣みたいに!」
突きつけていた切っ先を思い切り振り上げ、身軽に空高く飛び上げると、落下の勢いと共に金茶色の頭の上に剣を振り下ろす。
青年は剣でそれを受け、脇へと払う。と、間髪いれずに払った右脇から、少女の左手が飛んできたのを、慌てて避けるように後方へ退いた。
見ると、少女の左手には、小振りな剣が握られている。
「お前! いつの間に小太刀なんか」
「っせぇっ!」
右の大剣と、左の小太刀、両方の氣を重ね合わせるように、両腕を振り上げ、青年に向かって打ち下ろす。
青年の目の前に、防御の魔法陣が展開された。
が、それが一瞬で、剣の風圧に切り裂かれる。

まさか、と彼は目を見開いたが、すぐさま、青年は自分の記憶力の甘さに愕然とする羽目となった。

彼女は、指で直接陣を描くことをしない。
自分のエネルギーに乗せて陣を剣先に送り込み、直接相手に叩きつける。
先に描いた魔法陣は一瞬で破壊され、彼女の陣のエネルギーが勝っていれば、そのままダメージを受けることになる。直後に、魔法陣を描く時間すら与えられない。

こいつは、ある意味タチが悪い。

「あたし、頭で覚えられないから、身体で覚えてるんだよね」
ちょっぴり舌を出しながら、少女は藍色の髪を掻いた。
ごめん、もうこれは無しね。と、小太刀を鞘に納めると、少女は再び大剣で青年に打ちかかる。
「切羽詰ると、血で敵を囲むようにしてさ、気合入れたら発動すんの」
「……そうだな」
少女の剣を反射的に受けながら、ジェイは彼女の口から出る言葉を薄ら寒い思いで聞いていた。

まるで黒魔術。

彼女の血液そのものに宿るエネルギーを利用した、命を削る攻撃魔法。
過去の彼女が戦う様を、彼はそれこそ全て見届けてきた。
だが、実際に彼女の剣を受けてみると、その剣が「諸刃の剣」であることを、改めて思い知らされる。

少女の精神力が続く限り、攻撃力も防御率も衰えることはないが、一度感情や精神にダメージが加わると、あっけないほどその両方が落ちるだろう。
感情に左右されない、技術的な方法を身につけなければ。

「じゃあ今度は、頭で覚えてみろ」
「やだー。覚えられないもん」
青年の剣を払いながら、少女は心底嫌そうに答えた。
「それじゃ、切羽詰った時しか使えないだろ。覚えたほうがいい」

もう二度と、命を削ることのないように。

こうするんだ、と青年は早口に呪文を唱え、指で魔法陣を描き出した。
少女の周りに、碧い魔法陣が描かれ、陣から炎が立ち上がり、彼女を取り囲む。
その炎はしばらく少女を取り囲んで、彼女の姿を隠していたが、やがて黄金色の光が炎をうち消し、藍色の少女を解放した。
突然現れた炎と熱に驚き、メイシンは全身から黄金の闘氣を発したのだった。

炎から解放された少女は、煤けてしまったお気に入りの服の裾をつかんで、思わず叫んだ。
「もーっ! 服が焦げちゃうじゃない!!」

……魔法も使わずに、エネルギーだけで弾き飛ばしたか。

こいつは手ごわい。
碧い瞳を閉じて、青年はため息をついた。
「悪かった。新しいの買ってやるから」
「ホント!?」
不機嫌な表情から一転して、少女の青い瞳が輝きだしたのを見て、青年は少しだけ後悔した。
「……ちゃんと魔法陣覚えたらな」
「げーっ」
少女は藍色の頭をかくん、と下げ、がっくりと肩を落とした。


「殺陣」っていうほど、華麗な動きは出来ないんだよね、彼女。
とにかく力いっぱい、本能で動いてるような。(^_^;)
。。。。ていう、表現力不足のいいわけ。orz

そういうところに時間かけずに、さっさと書いてしまいなさい。
って、なんか緑色の瞳の人に言われてるような氣がする。。。

コメントを残す