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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光4・手応え

「うー…」
メイシンは思わず、テーブルに突っ伏して唸った。
次々と並べられる、呪文のような彼の言葉が、右から左へ耳の中を通過して頭の中に留まらない。
「聞いてるか?」
いぶかしげに、ジェイは少女の顔を覗き込んだ。
「聞いてる。。。てか、聞こえてる」
突っ伏したまま、メイシンは答える。椅子に座っているのも辛そうだ。
一向に、魔法陣の描き方を飲み込めない彼女の様子を見て、青年はため息をついた。
「じゃあ、とりあえず描いてみろ」
「えーっ!分かんないって言ってるのに!」
「聞いてたんだろ」
う。と小さく唸って、少女はしぶしぶ、テーブルの上に小さな円を描き始めた。
「違う」
間髪いれずに、青年の声が飛ぶ。
「なんで! 合ってるだろこれ!」
「左手で描けって言っただろう」
右手で覚えていては、剣を操る実戦で戸惑うことになる。
青年の指摘を受けて、少女は胸の中で悪態をついた。

………いちいち細かいんだよなぁ……。

どっちでもいいじゃんよ。という言葉を、口の中で飲み込んで、彼女はもう一度、左手をぎこちなく動かし、陣を描き始めた。

木のテーブルの上で、一通り指を動かし、光の筋を刻み付ける。
出来た。と、ぱっと手を離すと、光の筋は一瞬で、微細な粉が散るようにかき消されてしまった。
「はい。やり直し」
淡々と告げる青年の声が、無情なまでに少女のやる気を打ちのめした。
「うがーっ!! もうやだーっ!!」
椅子の背もたれにどん、と背中を預け、反り返って、少女は吠えた。
教える側の青年は、疲労の混じったため息をついた。
少女の態度に、彼の気力も削がれているらしい。

(よくこんな奴に惚れたよな……俺)

「どーいう意味!」
声に驚いて少女を見ると、恨めしそうに目を細めて、こちらを見ている。
密かに漏らしたはずの胸の呟きを感知されて、青年は引きつった笑顔を浮かべた。
「……聞こえた?」
「ま、る、ぎ、こ、えっ!」
ぷくっと頬を膨らませ、口を尖らせている少女の姿を、青年は何故か憎めない。
「……なに笑ってんの」
拗ねた顔のままの少女に言われて、青年は思わず口元を手で押さえた。

参ったな。

最近、自分の感情を少女に見破られているようで、そこはかとなく、落ち着かない。
ツインのコードがそうさせているのかもしれないが。

小さく深呼吸して氣を取り直すと、青年は姿勢を正した。
「じゃ、もう一回いこうか」
「だーっ」
またしても、少女は机の上に頭をごん、とぶつけた。

唸りながらも何度か魔法陣を描いてはやり直し、青年の講義を聞いては、またテーブルに光線を描き、と繰り返すうち、窓の外に輝く太陽は、西の森へと沈みかけていた。

「出来た……」
テーブルの上で光を放ち、立体的な盾となって空中で自転する魔法陣を、大きな瞳で見つめながら、メイシンが呟いた。
小さいながらも完成された魔法陣を前にして、青年はにっと笑う。
「やれば出来るじゃないか」
嬉しいと言うより、ほっとして、少女はへなへなと椅子にもたれかかった。
「疲れたよ~」
ぐったりと、しおれた声を聞いて、青年は苦笑した。
「こっちにおいで」
言うと、ジェイは椅子から立ち上がり、少女をソファへと誘う。
急に優しくなった青年の声に戸惑いながら、メイシンはおずおずと青年の隣に座った。
長い腕が少女の細い肩に伸びて、藍い髪を胸元に引き寄せる。
二人のハートチャクラが繋がって、温かいエネルギーが循環し、流れはじめた。
心地よい波動に、少女はほっとため息をつく。メイシンはそのまま、青年の胸にもたれて寝息を立て始めた。
よっぽど疲れたのだろう。
少女の肩を抱きながら、青年も、少し眠ろうと思った。

ふと、耳をかするような機械音で少女は目を開けた。
部屋の中は暗く、すでに陽が落ちて、薄っすらと月明かりが窓から差し込む。
いつの間にかメイシンは、ソファで横になっていた。背中には薄い毛布がかけられている。
少女は、目の前のダイニングテーブルで、複雑な幾何学模様を見つめる青年の姿に氣が付いた。
平たい端末の上に、立体的に現れる模様や文字を、その端末を使って何やら操作している。

……なにしてるんだろ。

月明かりだけが頼りの部屋で、端末の映像から放たれる光に浮かぶ青年の顔を見ながら、またうとうとと、少女は眠りの淵に落ちていった。


なんかほのぼのしますな。(笑)
ジェイ君はパソコン?で何してるんでしょうか。。。未だに謎ですが。

さて。明日から私用でじっくりパソコンに向かえないので、来週まで更新をお休みします。
裏ブログは、ひょっとしたら、更新するかもしれませんが。

密かに始めた「裏ブログ」、このブログのどこかにポータル(笑)が繋がっていますので、見てみたい方は、探してみてください☆
(※2020年2月22日追記※ 現在「裏ブログ」は更新修了し、閉鎖しています)

それではまた来週~ヽ(´ー`)ノ

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