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【星紡夜話】星渉り5・「さようなら」1

「。。何故こんな事を言うか分からないか」
「。。。ごめんなさい」
ユリウスが投げかける言葉に対して、マーシアは俯いて膝の上のグラスを見つめたまま、二つの意味で謝った。
一つ目は、彼の言う通り、はっきりと理由が分からない事。
もう一つは、それでも自分に非があるという事。
彼女は、いつも通りにしているつもりだった。だがそこはかとなく、苦しさを感じている自分がいるのも分かっていた。どうあがいても拭いきれない悲しみと、そこからやってくる苦しみとが、彼女の心を苛んでいる。
それを見透かしているかのように、ユリウスはまた口を開いた。
「どうして俺に頼らない」
え。。と、言葉を一瞬飲み込んでから、マーシアは小さく口を開いた。
「。。。頼ってる。。」
「いや、頼っていない」
何故そこまで断言するのか分からない。マーシアの戸惑いに、ユリウスがその答えを投げた。
「お前最近、また「引き込んで」いるだろう?」
そう言われて、マーシアはハッと目を見開いた。
白い両手が、小刻みに震えだす。
「何故見ず知らずの存在を受け入れて、自分の存在意義を見出そうとするんだ」
ユリウスの言葉を聞くうちに、知らず知らず、マーシアの青い瞳から涙がこぼれ落ちていた。

低い存在に相対して、それを受け入れ癒す事を、彼女はまたしていたのだった。
気付かなかった。
自分でも気付かないうちに、また同じことを繰り返して、心を消耗させていた。

「以前にもあったな、こういう事が」
低い次元の存在に襲われた時、いくら言ってもシールドを張ろうとしなかった、マーシアの姿を思い出す。
苦笑いのような感情と共に、ユリウスは独りごちると、ソファの上で身を起して、ようやくマーシアに向き直った。
「俺の事が好きだろう?」
そう言われて、マーシアは頷いた。
「なら、俺から手を離すな」
虚ろな表情のマーシアのいる方へ、ユリウスは手を伸ばした。
「俺に出来るのはこれしかないんだ」
促すような彼の左手に誘われるように、マーシアはソファから立ち上がって、ユリウスの座る前へ歩いた。
そしてユリウスの手のひらに、そっと自分の右手を乗せる。
ユリウスは彼女の手を握り、自分の隣に腰掛けさせた。
「来いよ」
そう言われて、戸惑うマーシアに、ユリウスは付け加えるように言った。
「いつもずっと受け身だろう、お前は。自分からしがみつくんだ」
言われてからしばらく躊躇があったが、意を決するように、マーシアはユリウスの胸にもたれた。
抱きつくことにためらいがあった。本当に、頼ってもいいのかと。
頭が虚ろになっていた。正否の判断が出来ない自分に、マーシアは驚いた。
低い次元に相対していた弊害だろう。
「もっとしがみつけ」
言われて、とにかく必死になって背中に腕を回すと、ユリウスはようやく、マーシアの背中を抱きしめた。
「手を離すなよ。絶対に」
こくりと、マーシアは頷いた。
とにかく、今はこの人の事を信じようと。
「隙を見せるのは、俺の前だけにしろ」
また頷いて、ため息をつく。次第に心が落ち着いてくるのを感じて、マーシアは瞳を閉じた。
「俺から逃げないでくれ。。。頼む」
急にユリウスの声が切なく聞こえて、マーシアの胸が痛んだ。
終わりにしたはずなのに、どうしてまた、同じ事を繰り返しているのだろう。。
ごめんなさい。。

今は自分からしがみつかなければ。
あなたを求めなければ。
「今ここ」に留まらなければ。
自分の心が逃げないように。朽ち果ててしまわない為に。
それが今、自分に必要な事なのだ、と、マーシアは心に言い聞かせて、ただ懸命に、ユリウスの背中を掴んでいた。

必死で「今」の彼にしがみつき、留まろうとしながら、マーシアは「過去」の彼に語りかけていた。

。。ソラム。
私は、あなたから逃げるつもりはない。
もう逃げない。
けど、違う道を探そうと思ったの。
あなたと一緒に、今までとは違うやり方で、
一緒に、目的を果たす道。。

自分を苦しめる能力を捨てることは、逃げる事ですか?
助けられる人を助けないのか。見捨てるのか。と言われてるみたいで。
でも、この能力でさえ抱え続けて、違うやり方を模索して、果たしてそれをし続けられるの?

ソラム。あなたはどうしたいの?
私は、それも含めて、全て私が決めていいの?

体の奥から熱い感情が込み上げる。痛みが、マーシアの体の内側を走る。
吐き出せなくて、中で感情が爆発してるようだった。
「。。過去の感情か」
マーシアの異変を感知した様子のユリウスが、彼女を抱きしめたまま呟いた。
「激情をコントロールしようとするもんじゃないな。頭が割れそうに痛い」
「。。。ごめんなさい」
「謝る必要はない。俺が同調してるだけだ」
どうやら、マーシアの感情にシンクロしているようだ。ユリウスの眉が苦痛に歪んでいた。
労るように、マーシアは彼の頭を撫でる。
ユリウスの短い金髪に触れて、彼に抱えられる感触を改めて感じて、ほっとする。

手ごたえがないと、どうして信じられないのだろう。
あなたに居てほしい。
けど、
居るのかどうか分からない。
信じていいのか分からない。
傍に居るのに分からない。
だから、信じられるようにして。
手ごたえが欲しい。温もりが欲しい。
それだけ。それだけなの。

ごめんなさい。。居てくれるのに、信じられないなんて。

マーシアの心に答えるように、ユリウスの腕に力が込もる。

(好きだよ。愛してる。。大好きだよ。愛してる。。)

彼女の胸の奥で、ずっと彼の声が聞こえていた。


丁度区切りがいいんじゃね?←
というわけで、今回から、ちょっとピッチを上げる為に、お話しの書き方を変えました。
どこが変わったの?←
と言われるかもしれませんが。。自分的にはかなり変わってます。(笑)

これからは、ほぼ毎日更新を目指します。
この書き方じゃあんまり伝わらないというか。。作品としては不出来、という不満はありますが、その辺は、後ほど「完全版」を上げる事で解消していこうかと。
まぁ、半分は自己満の世界ですからね。

何で変えることにしたのかは。。ツイッターでちょっとぶつやいたので省略。
過去話の序文ではちょっと触れるかもしれませんが。
単純に、この方が楽に書けるんです。(笑)

ま、どーでもいいですね。(笑)
つたない文章力でも、とにかく楽しんでいただければいいかなと。←

今後の予定。
この「マーシア」のシリーズが一段落したら、B102を塗ってる時に見た夢の話を上げて、
その後ジェレミー君のシリーズに行くか、過去話に行くか。。は、ちょっとまだ迷ってますが、どちらかを上げ始めます。

気分的には、事務的にサクサクっと上げてしまいたい気分なので。。。自分的には「不完全」なのを承知の上で、文章的にはお構いなしに、とりあえず上げていきます。
興味ある方はよろしくです*

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