「桜追唱」│詩片

 

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「あの頃」の私には、守るものがあった。

それを守るために、ずっと必死で戦ってきた。

でも、私はすぐに傷ついて、戦線離脱を余儀なくされた。
仲間は、傷ついたり袂を分かったりして、ほんの僅か残るだけ。

傷ついたままでも戦える。戦いたいから。

癒えない傷を負ったまま戦場に出て行こうとする私を、私の片割れが引き止めた。
「もう、駄目だよ」
でも、あの人ひとりだけで行かせられない。

行かせたくない。

あの人には、私たちにはないコネクションがあった。
頼みの綱はそれだけ。
当時のお偉いさん達に、話を聞いてもらえたら、こちらの言い分を聞いてもらえたら。

あの人は必至でお偉いさん方を説得したけど、結局駄目だった。

最期の戦いに臨んで出ていくあの人を、私は見送るしかなかった。

「生きろよ」

あの人と地上で会った最後の日、
私の病床を見舞ったあの人は、そう言い残して去っていった。

今なら解る。
あの人は、死に場所を探していたんだ。

不器用だからさ、
曲げられなかったのさ、己の意地みたいなものを。
信念っていうより、意地だね。

生きられなくて、ごめん。

「あんたが倒れさえしなければ、あの人は死なずに済んだんだ」

そんな風に、私を責める誰かの声が聞こえた。
そうなんだろうか。
私にはそんな力があったろうか。
あの人を支えるほどの力なんて。。。あの人を、守るだけの力なんて。。

私は、何を守りたかったんだろう。
 
 
私の記憶の断片には、ずっと桜の花があって、
私達はずっと、大きな古い桜の樹を守っていたんだ。

この桜の樹は、とても立派で、見事な花を咲かせているけど、
どうして、桜の樹なんか守ってるんだろう。。
こんなものを守るために、なんでこんなに命がけで、必死になっているんだろう。。

十代の私がそう呟くと、一緒に桜を守っていた小さな子供が、笑顔で無邪気にこう言った。
「だって、サクラはニッポンのしょうちょうだもの!」

。。。ああ、
この子がそう言うなら、間違いない。

これだけは、絶対に、守らなきゃ。
って、なんで、これを思い出しただけで、号泣しそうになるんだろうな。

私が守りたかったのは、
あの人と私が守りたかったのは、
この国に生まれ育った人としての、誇りと尊厳だったのかもしれない。
  

 

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