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風の小径 詩片

「宝物」│詩片

『おとうさま、わたし、あの星に行きたい。あの人の所へ行きたい』
 
 
ああ
知られないように 触れられないようにと ずっと隠しておいたのに
何故あなたは
どうしてあなたは あの星を見つけてしまったのか

『だって、泣いているの。助けてくれって』
 
 

助けられたのは、一番大事な人だけ。

あとは、
 
 
 
インナーチャイルドが、何か抱えて持っている。
それは大事なものなの?
それは大事だと勘違いしているものなの?
それとも、「可哀想な私」なの?

それは幼女の小さな両手の中で、白く光って見えていた。
手放しなさい」
と、ハイヤーセルフが言う。母のような美しい姿で、優しく。
でも、インナーチャイルドは不安そうにそれを握りしめて、離そうとしない。
「私がもっといいものをあげる」
と、ハイヤーセルフがインナーチャイルドに言う。
「あなたが大好きなもの」
と、ハイヤーセルフは、緑の綺麗な石を幼女に差し出した。
インナーチャイルドはそれを見て瞳を輝かせた。そしてハイヤーセルフが差し出す綺麗な石に手を伸ばした時、それまで握っていた石をコロンと落とした。

白く綺麗に光っていたと思っていたそれは、薄黒く汚れていて、

落として初めて気がついた。それは宝物でも何でもないと。

落とした石の代わりに、ハイヤーセルフからもらった石は、キラキラと、インナーチャイルドの胸に輝く。
インナーチャイルドは、綺麗に透き通るその石に魅入り、嬉しそうに微笑んでいた。
ハイヤーセルフは幼女を抱えて立ち、幼い顔が喜ぶのを見て微笑んだ。

汚れた石は、砕いて天に還そう。

汚れた石は、幼い身体からすべて離れて、粉々になって天に昇った。
 
 
ああ。
汚れて傷ついて泥だらけになって、
泥の中で何かにしがみついて、
そうして見つけた、宝物のようなものは、

偽りの契約と、イミテーションジュエル。

それが無いと生きていけなかった自分は、もういない。
もういない。
もういない。

『きちゃない、きちゃない、もういらない』
と、インナーチャイルドは持っていた汚物を捨てた。
『いやっ、いやっ、もういやっ、いらない! いらない!』

さようなら、泥だらけのわたし。
さようなら。
さようなら。
 
 
私はもっと、自分を大切にします。
 
 
 
助けられたのは、一番大事な人だけ。

あとは、もう、

いらない。
 
 


 
 
  
『おとうさま、ただいま』
 
 
 

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