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風の小径 詩片

「贋者」│詩片

「お前は地上の支えがなくても生きて行けるのか?」

悪鬼は笑う 薄汚れた石ころにも劣る野心を抱き
この地獄から 僅か一歩でも這い上がる好機を伺い

先ほど私が失った 最愛の者を装う

「鬼に失礼だよそれは。奴らは鬼にも劣る」

アーシャの中のシドが 冷たい笑顔で嗤った

鬼にも劣る者を引き寄せる
わたしやっぱり 存在次元低いのかな。。。

「遺伝のせいよ。気にする事ないわ」

アーシャの中のメリッサが 表情もなくさらりと言った

 

これは「血の宿命」

この「血」に依存すれば 苦労なく次元を越える その「恩恵」にあやかれる
それを見透かす彼らの 小汚い手口

 

ああ、リンみたいになりたいんだ?
けど、もうやらないよ、私は。
自分で這い上がりなさい。自分の力で乗り越えなさい。
私があんたの苦労を背負い、代わりに乗り越えてやる義務はない。

冗談じゃあーりませんよ。誰が依存体質者の面倒なんか見るか。

お前が、お前の心を探って、這い上がれない原因を見つければいい。

 

そう それすらも理解できない

這い上がる意志すら持たない 下賤で卑劣な「仲間意識」は
負の境界から一歩 踏み出そうとするその足を もっともらしく鷲掴み

「私は高次に転生しましたよ。あなたも高い所に来てますよ。安心して。さあ、私と一緒に」

 

。。最愛の者を装って 私に傷を負わせた罪は重いぞ

責任は取ってもらう
魂を賭けて

お前が「高次元に転生した」というのなら それを証明してもらおう

 

シド。。ヴァサリア。こいつを光の中に放り込め。

 

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虹色に光る 水晶造りのカテドラルの床を這いながら
苦しみに喘ぎのた打つ 「高次の彼」を見下ろして
ヴァサリア=アーシャは独りごちる

「準備運動も無しに放り込んだの?酷ねぇ。害虫みたいにのた打ちまわってるじゃないの」
「主の命令だからね」
「あんた意外と人でなしね」
「君ほどじゃないよ」
「あらひどい」

高波動の 光磁場に放り込まれた「高次の彼」は
やがて青黒い肉塊を 屁泥のように溶かし崩れた

「。。。。あら溶けちゃった。汚い」
「珍しいパターンだね。。。光にも還らないとか相当。。」
「くだらない動機で近づいたんだわね」
「掃除しなきゃなぁ。。。」
「指一本で片付くでしょ」
「まあそうだけど」

己の中の 男性性と女性性を交叉しながら
アーシャが右手の指を鳴らすと
白水晶の上の「汚物」は 光に包まれ消えて行った 

 

お前は

どこの「高次」に居たんだい? 口ほどにもないじゃないか

 

アリョーシャ・リンはね

この波動の中で 己をどんどん変えて行ったよ
この光の中で 闇を制し 耐え抜き
闇にも 光にも 存在できるようになった彼を 私は知ってる

 

 

お前は、贋者だ。

 

 

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