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【星紡夜話】星渉り3・造成

物を「作る事」に関しては、どうやらユリウスよりもメリッサの方が優れているらしい。
彼女は何かを「創造」する時に、愛用の杖を使う。
魂本来の性質を取り戻した後のメリッサは、以前握っていた闘剣から、この「創造の杖」に持ち替えた。
それからの彼女は、ずっと何かを「作る」ことを日課として、それに喜びを感じている。

ユリウスの構想を受け取って、メリッサはしばらく、テラスに仁王立ちになっていた。
小柄で華奢な体に纏う、丈の短いキャミソールとスカートにふんだんにあしらわれた、淡いピンクのフリルが風になびく。癖のある長い金髪も、一緒に風に揺らいだ。
魔法少女のような姿で眉間にしわを寄せていたが、やがて彼女は、う~と唸って金色の髪をかき混ぜた。

ここで作った方が楽だよね~。。

「おし」
と、気合いを入れるように呟いて、メリッサは腰から小さな金色の棒を取りだす。途端にそれは一メートルほどの長さに伸びて、彼女が「物作り」に使う金色の杖になった。
彼女はその杖で、テラスを囲む手すりの根元に、何やら線を引く。線は金色に光り、エネルギーを宿した。
そしてその線上に、杖の先端をトンと突き立てると、杖の反対側の先端から光が溢れた。
杖の上先端に据え付けられた、大きなルビー色の石が、光に揺らめく。
同時に光った床上の陣から、透明の壁がざあっと音を立てて天にせり上がった。
「おっし!」
造成されたクリスタルの壁を見上げて、メリッサは会心の笑みをこぼす。
が、それはすぐに冷汗に変わった。
現れたクリスタルの壁が、メリッサの立つ方へ倒れかかってきたからだ。
彼女は慌てて、両手を広げて壁をがっしと支えた。
「。。お~も~い~っ!」
二、三メートル四方はある大きな透明壁を必死で押し戻しつつ、メリッサはダイニングの入口を振り返って叫んだ。
「ユーリ~!接着手伝って~!」
「ああ」
すぐに返事が返ってきた。
リビングダイニングに居たらしいユリウスが、テラスに顔を出す。と、彼はメリッサの姿を見て、思わず笑いが込み上げるのを堪えながら言った。
「何やってんだお前」
「早く手伝ってよっ!」
苦々しげに叫ぶメリッサの頭一つ分上を、ユリウスの左手が軽い動作で押し戻す。
それだけで、メリッサはのしかかる壁の重圧から解放された。
気の抜けたため息をつくメリッサを腕の下に見ながら、ユリウスは思わず苦笑する。
彼女が作ったクリスタルの壁を見渡すと、それは確かに大きな壁だが、テラスを囲むにはまだまだ足りない大きさだった。
ユリウスは壁を見上げたまま、メリッサに尋ねる。
「『増幅』でいいのか?」
「そゆこと~っ♪」
余計な言葉を交えずに通じるのは助かる。そう言いたげに、メリッサは明るく返事をした。
ユリウスは、左手で抑えたままの壁を設置位置まで押し戻すと、その壁面に右手で素早く魔方陣を描いた。
ピシッと、割れるような音が少しして、支えていたクリスタルの壁が、縦に横に大きく広がった。
それはテラスの手すりをぐるっと囲むように巡り、家の外壁へと伸びて屋根を作り、ぴたりと納まる。
「良い感じじゃ~ん♪」
クリスタルの透明な屋根を通して降り注ぐ、太陽の光を見上げて、メリッサが言った。
「けど、支えはあった方がいいよね」
メリッサが金の杖で手すりを一度軽く叩くと、それはクリスタルの壁に張り付くように動き、角や要所に蔦が這うように伸びていった。木製の蔦が屋根にまで達し、家の外壁と透明な壁を固定するように伸びきって定着する。みるみるうちに、壁を支える枠が完成した。

「このクリスタルね~、昼間は熱くならないように調整してくれるから、直射日光でも大丈夫だよ」
枠の完成度を確かめつつ、メリッサはユリウスに説明を始める。
「でもって、太陽からのエネルギーの増幅はちゃんとしてくれんの。ここに居ると回復早いと思うよ~」
「お前にしてはなかなかの出来じゃないか」
「もっと褒めなさいよ」
少し不満げに、メリッサは横目でユリウスを睨んだ。
「後は床を頼む」
メリッサの不満げな声には耳を貸さず、ユリウスは含み笑いを口元に浮かべて言った。
「。。へいへい」
諦めたように、メリッサはまだ不満げな視線を、ひび割れた床板に落とした。
「床は「修復」でいいんじゃない?」
「任せる」
「修復なら楽ち~ん♪」
一任されるとやる気が蘇るらしい。
メリッサはテラスの中央に立つと、一枚の古びた床板を囲うように、金色の杖でなぞり始めた。
なぞった跡から、金色の線が浮かび上がる。
その板の中央を、杖の先でトンと突くと、ひび割れた床板は瞬時に真新しい落ち着いた色合いの板に変わった。
「はい。これコピーして増幅~♪」
修復した床板を中心にして、メリッサはテラス中に光の円陣を杖で描く。準備が整うと、彼女は金色の杖を中心に立てて、貼りめぐらせた円陣にエネルギーを流し込んだ。
真新しい床板の情報を杖が吸い上げ、増幅して全ての床に広げる。
カウンターやソファが置かれた床板も、ユリウスが立っていた足下の床も、波が広がるように一瞬にして「新品」に変わっていった。
「こんなもんじゃない?」
「良い色だ」
ユリウスは靴の裏で質感を確かめるように、ダークブラウンの真新しい床板を何度か叩いた。
満足げなユリウスの表情を見て、メリッサはにっこり笑顔になる。
「コーティング用のワックス持ってきて~。一緒に増幅して広げちゃうから~」


なんか、今のメリッサみてると、射手座の女っぽいんだよねぇ。(笑)
相変わらずえぇコンビやな。この二人。
さて、次回はお決まりの。。アレをやります。←

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