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【星紡夜話】星渉り2・改装

古い板張りのテラスに立って、ユリウスは一人思案していた。

ダイニングキッチンと同じくらいの広さはある。
東にカウンターをしつらえて、後はソファセットを置ければ良い。
吹きさらしのベランダのようなテラスの手すりを外して、ガラス張りの壁と天井を作ろうか。
テラスから見える景色は、結構重要なインテリアのひとつだから、ここからは絶景を望みたい。

一通り部屋の構想を練り終わると、ユリウスは何も持たない左手に、愛刀を呼び出した。
思案したものはすぐ形にする。
彼は金色の鞘から剣を引き抜き、テラスの奥の床に円を描くように空を斬った。
床に金色の魔方陣が浮かび上がり、眩しい風がユリウスの短い金髪を揺らした。
光が収まった後に現れたのは、重厚な質感のカウンターと、様々な種類の酒が一面にずらりと並ぶ壁。そのカウンターの前に据えられた回転椅子が二つ。
それは、先ほどまでソル・アスールに備え付けられていた、ユリウス手作りのバーカウンターだった。

移設完了、かな。

彼は使い古された鈍い艶を放つ、ダークブラウンの木製カウンターに触れて質感を確かめ、酒のボトルの数が足りているかを目でざっと見渡すと、今度は同じ要領でソファセットを呼び出した。
テラスの中央に、やはりソル・アスールで使っていた布張りの長ソファとテーブル、そして一人掛けのソファが二脚現れる。

大まかなセッティングが済むと、ユリウスは改めてテラスを見まわし、足元に視線と落とした。

だいぶ傷んでるな。床も貼り替えるか。

細かい割れが目立つ床板を見つめながら、さてどんな手段で貼り替えをしようかと思いめぐらし。。ユリウスはふと、ある事を思いついた。

。。。これは、あいつを呼んだ方が早いか。

「ハァ~イ♪ なに?」
テラスに呼び出されて、陽気な返事をしながら、メリッサはユリウスの長身を見上げた。
「ここにガラス貼るの手伝ってくれないか」
「ガラスにすんの~?」
テラスを見渡して、メリッサは納得いかないように、癖のある長い金髪の頭を掻いた。
「どーせなら、石使ったらいいんじゃない?」
「石か」
「ちょっと特殊な透明クリスタルとかさ~。。」
メリッサは、自分のひらめきに満足げな笑みを浮かべた。
「んふふ。ちょっとした「神殿」になっちゃうかもよ?」
「名案だ。そうしよう」
ユリウスが快諾すると、メリッサはその反応に思わず噴き出す。
「ぶっふ。バーカウンターがある神殿とか、有り得~ん」
「画期的じゃないか」
全く悪びれる様子も無く、ユリウスは不敵な笑みをメリッサに返した。
「ついでに、床も貼り替えてくれないか」
「いいけど。。。」
床を見渡そうとして、すでに設置されてあるバーカウンターとソファセットが目に入り、メリッサは思わずため息をついた。
「あのさ~。物を置く前に呼んでくんないかな~?」
「すまん。ちょっと気が急いた」
ユリウスの返事には、僅かに照れ笑いが混じっていた。


とりあえず、書ける所まで書いて上げております。
先日の上での出来事も続けて書こうと思ってるので、当初よりも長いシリーズになりそうです。
続きはまた後ほどw

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