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【星紡夜話】星渉り1・居場所

先日のこと。
ユリウスが唐突にこんな事を言い出した。
「バーカウンターを作ってもいいか」

あ?(笑)

ジェレミーは、ダイニングテーブルで一服していた所を、ユリウスににじり寄られた。
ユリウスが頼み事をする時はいつもそうだ。マーシアではなくて、必ずジェレミーに打診する。
毎度の事なので慣れてしまったのだが、ちょっと苦笑いしながらユリウスを見上げ、
「。。どこに?」
ジェレミーは肩をすくめてそう言った。

。。そう言われるとそうだな。

カスタリアの小さな家の、一体何処に作るのか?
ユリウスは顎に手を当ててしかめっ面になり、ちょっと思い悩んでいた。
そんな彼の様子を見上げていたジェレミー、苦笑しながらも一緒にあれこれ考えていた様子だが、
ふと、良い場所を思いついたらしい。
「。。じゃあ、テラスはどう?」
ダイニングの横に続いている、掃き出し窓を振り返って言った。
「いいのか?」
皆のちょっとした憩いの場をもらってもいいのかと、柄にもなくためらうユリウスに、ジェレミーはニッコリ頷く。
「うん。普段使わないし。全面改装しちゃっていいよ」

ユリウスがこんな事を言い出した経緯を遡ると、ソル・アスールに帰る理由がなくなった事に起因する。

最近になって、ユリウスは改めてメリッサに聞いてみた。
「お前、ソル・アスールに帰るつもりはあるか?」
「ないよ~」
ごくあっさりと、メリッサは軽く返事をした。
「あたし、ここでやる事があるから。もうあっちには用事ないしね」
そう言うと、テーブルに向き直って、黙々と何かを描き続けていた。

居場所か。

ユリウスはしばし考える。
以前は、ここに居場所がなくなって、新しい場所を求めた。
でも今は、ここに自分の存在理由を求めている。
メリッサがそうであるように。
それはユリウスとて同じだった。

ここに住むなら、自分の「居場所」を作らないとな。

既に「居場所」を見つけているらしいメリッサの姿を見ながら、彼はそう思ったらしい。

メリッサはいつも、ダイニングテーブルに大きな紙を広げて、何かを描いていた。
彼女が作業を始めると、ダイニングテーブルを占拠されてしまい、他の用事に使えなくなるので、メリッサの為のスペースを、ジェレミーが作ってくれたらしい。
今は、寝室のベッドの横に作業机をしつらえて、そこでずっと何かを描き続けている。

ソル・アスールには、ユリウスの居場所があった。
彼が何の縛りもなしに、自分自身でいられた場所だった。

だが彼にも、もはやそこに「帰る」理由がない。
彼もここに居ると決めた。ここに彼の望む「生き甲斐」がある限り。

ジェレミーの許可を得たユリウスは、早速、テラスに出て改装の「構想」を練り始めた。


えーと。
少し前に降りてきた、上の様子を書いてみました。
別にシリーズ化するつもりはないんですが、とりあえず番号振ってみた。(笑)
過去話を書く合間に、上の様子が降りてきたらこんな形で書こうかな。と思っとります。
気がついたら、1年以上「お話」を書いてない。。よね。私。(^_^;)
ちょっと腕慣らしも兼ねております。
元々、大した文章書けるわけではないんですが。感覚は取り戻さないとな。というわけで。
ユリウスの「テラスサロン化改造計画」、もうちっと続きます。(笑)

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