私がまだセーラー服を着て歩いていた頃。
家路へ向かう、いつもの道に、大きな桜の木があった。
薄桃色の花びらを、満開にして立っている。
風に吹かれると、きらきらと花弁を振りまく。
その花びらの舞い散る中に、
ふわりと、幼い少女の姿が浮かび上がった。
年のころは五、六歳だろうか。
黒髪をなびかせ、
真っ白なワンピースの裾をひるがえし、
彼女は軽やかに、地を蹴って、
きらきらと煌く、桜色の花びらと一緒に、くるりと回った。
その花びらが地に落ちる頃には、
白い少女の姿はもう、景色に溶けてなくなっていた。
花の妖精のようなその姿が、
どこか懐かしくて、
切ないほど美しくて、
もう一度彼女を見たいと目を凝らし、
私はしばらくその場に立ち尽くしていた。
それが、私とマーシアとの、初めての出会い。
あれからまた時を置いて、
子供を連れて歩くようになった頃、
お花見の桜の下で、再び黒髪の少女に出会った。
彼女と似て、異なる魂の少女。
それが、全ての始まりだった。
今、あの黒髪の幼かった少女は、
金色に輝く長い髪をうねらせ、
白い大きな翼を広げて、
私の前で微笑んでいる。
穏やかであたたかい、笑みをたたえて。
長くてつたないお話に、ここまでお付き合いくださった皆様、
本当にありがとうございました。
私の心の整理と、本来の健康を取り戻すために始めた、試行錯誤の日々の影に、
お話を書くことで、それを取り戻せると理解してくれた夫がいました。
この話を書くために、睡眠時間を削り、リアルでやるべきことが後回しになっても、
黙って見ていてくれた夫に、心から感謝。
そんな夫と、子供達に、このお話を捧げます。
本当にありがとう。
ありがとうございました。