カテゴリー
風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光・終章「桜花」

私がまだセーラー服を着て歩いていた頃。
家路へ向かう、いつもの道に、大きな桜の木があった。
薄桃色の花びらを、満開にして立っている。
風に吹かれると、きらきらと花弁を振りまく。

その花びらの舞い散る中に、
ふわりと、幼い少女の姿が浮かび上がった。

年のころは五、六歳だろうか。
黒髪をなびかせ、
真っ白なワンピースの裾をひるがえし、
彼女は軽やかに、地を蹴って、
きらきらと煌く、桜色の花びらと一緒に、くるりと回った。

その花びらが地に落ちる頃には、
白い少女の姿はもう、景色に溶けてなくなっていた。

花の妖精のようなその姿が、
どこか懐かしくて、
切ないほど美しくて、

もう一度彼女を見たいと目を凝らし、
私はしばらくその場に立ち尽くしていた。

それが、私とマーシアとの、初めての出会い。

あれからまた時を置いて、
子供を連れて歩くようになった頃、
お花見の桜の下で、再び黒髪の少女に出会った。

彼女と似て、異なる魂の少女。

それが、全ての始まりだった。

今、あの黒髪の幼かった少女は、
金色に輝く長い髪をうねらせ、
白い大きな翼を広げて、
私の前で微笑んでいる。

穏やかであたたかい、笑みをたたえて。


長くてつたないお話に、ここまでお付き合いくださった皆様、
本当にありがとうございました。

私の心の整理と、本来の健康を取り戻すために始めた、試行錯誤の日々の影に、
お話を書くことで、それを取り戻せると理解してくれた夫がいました。

この話を書くために、睡眠時間を削り、リアルでやるべきことが後回しになっても、
黙って見ていてくれた夫に、心から感謝。

そんな夫と、子供達に、このお話を捧げます。

本当にありがとう。

ありがとうございました。

コメントを残す