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【星紡夜話】みなもの光23・宿命(さだめ)た場所へ2

メイシンの寝室の外、そのドアのすぐ横で、ジェレミーは壁にもたれて二人の様子を感知していた。

もう逃げるなよ、か。

メイシンの、愛する者を引き寄せる「強さ」を、彼は素直に敬服する。
アクアマリンの瞳を閉じて、青年は静かに息を吐いた。

今度は、僕が言われる番になったかな。

吐き出した息を取り戻すように、ジェレミーは息を吸い込むと、寝室の壁から立ち去った。
そのまま、ゆっくりとリビングダイニングのドアへと向かう。
ドアノブに手をかけ、祈るように目を閉じてから、ノブを回してドアを押し開けた。

水色の髪を揺らして、マーシアがキッチンから出てきたところだった。
両手に持った盆の上には、水と、よく煮込まれた温かいスープの皿が乗っている。
メイシンの部屋に持っていくところだったのだろう。
ジェレミーが入ってきたのを見ると、彼女は少しためらってから、小さな声で彼に尋ねた。
「……メイシン、もう大丈夫ね?」
「……うん」
青年の答えを聞いて、マーシアは静かに盆を持ち、リビングを出ようと歩き出した時、

「君はどうして、彼を選んだの」
ジェレミーの声が、再び彼女の足を止めた。
抱えた盆の上を見つめたまま、マーシアはしばらく無言だった。
「……あなたに、似ているから」
ようやく紡ぎ出された言葉は、ジェレミーにとっては心外なものだった。
「彼が?」
ユリウスと似ていると言われて胃が悪くなったのか、ジェレミーはみぞおちを押さえて眉をしかめた。
マーシアは少し大きな息を吸い込むと、彼女なりの気丈さを持って、満面に笑みを作る。
「独占欲の強いところが」
その笑顔に、青年はいささか打ちのめされた。
こんなところで笑顔を作られるとは思わなかった。

更に追い討ちをかけるように、マーシアは微笑みながら続ける。
「私はあなたをずっと探していたの。でも、あなたは私の前に現れてくれなかった」
そういい終わる頃、マーシアの言葉の端に、感情の波が揺れて見えるようになった。
「だって私は、ずっとあなたを待っていたのに、探していたのに、現れてくれなかったじゃない。
わたしはあなたが好きなの。離れたくなかったの」

探しても逢えない寂しさに、藁をも掴む思いで、「彼」を見つけてしがみついた。
ツインのコードなどすでになく、何のしがらみも引き止める者もなく、彼女はユリウスに自身のエネルギーを注ぎ込み続けた。
神殿の復旧の時でさえ、止めに来なかったではないか。

ブルートパーズの瞳に涙を浮かべ、零れ落ちるのを止められなくなって、マーシアは盆をダイニングテーブルの上に置いた。
涙を拭う細い指を、アクアマリンの静かな瞳が見つめたまま、青年は小さく呟いた。
「……言わせたかった」

そう言わせたかった。

ジェレミーの言葉に、今度はマーシアが目を見張った。
「君は昔から何も言わない。どんなに苦しくても僕を頼らないで、なんでも一人でやろうとして……僕が黙って見てるだけだと思ってたのか? 何度手を差し伸べたいと思っていたか分からないのか?!」
話すうちに彼も感情が高ぶったのか、口調が荒々しくなるのを抑えられない。
ジェレミーの激しさに煽られて、マーシアの瞳から、再び涙が零れ落ちる。
その涙で、アクアマリンの瞳はようやく落ち着きを取り戻したようだった。
「……ごめん」
気持ちを入れ替えるように、ジェレミーは一度息を大きく吐き出した。
彼女が彼に繋がった理由は、彼女の魂の、もっと奥深いところにある。
知っていたからこそ、彼は手を出せなかった。
自分から振り払わなければ、そこから完全に抜けられないことを知っていたから。

だが、そんな彼女を見続けることに、彼の方が耐えられなかった。
だからコードを切った。

そんな自分に、彼女を責める資格はない。
けれどこのまま、もう見ているだけの存在ではいられなくなった。
逃げていたわけではない。
だが、留まり続けることは、結局「逃げ」でしかない。

一歩を踏み出す。
この部屋に入るとき、青年は胸にそう決めていた。

「ちゃんと言って欲しいんだ。何が欲しいのか。何をして欲しいのか。僕は……」
言いかけて、ジェレミーはため息をひとつ吐き出す。己を呆れるように。
「……天使時代の悪い癖かな。頼まれないと動けないなんて」
「……きっと、そう…」
涙声で、マーシアが呟く。
「わたしは、その癖にずいぶん苦しんだんだから……」
ずっと、彼に求めてもらいたかった。
自分から求めるばかりの日々に疲れ果てて。

涙が止まらないマーシアへ、離れた場所から、青年はすっと手を差し伸べた。
「……おいで」
しばし訳が飲み込めず、立ち尽くす彼女に、ジェレミーは微笑みかけた。
「おいで。僕はもう待たない。……待ってたって、君は来てくれないんだから…」
だが、彼女は彼の手を見ることが出来ない。
うつむいた顔から、涙がの粒がぽろぽろと零れ落ちた。
「……わたし…あなたの所に帰る資格なんて…」
「僕だってないよ」

コードを切ったのは僕なんだから。

戸惑うマーシアに、ジェレミーは苦笑を返す。
「お互い様で、ちょうど良いじゃないか」
彼女への言葉でもあった。が同時に、彼自身の気持ちをはっきりとさせるために、ジェレミーはそれを口にする。
「もう終わりにしよう。僕は、君が離れていることに、もう耐えられない」

本音を話そう。
君の前では、もう何も繕わない。

立ち尽くしたままのマーシアに、ジェレミーは更に呼びかけた。
「来てくれないの?」
うつむいたまま、涙も堪えきれずに震えていた水色の髪が、マーシアの細い肩と共に揺れている。
かすれるような声で、彼女はやっと声を絞り出した。
「……きてよ」
その小さな声に目を見張った青年の顔を見ることも出来ずに、マーシアは、ずっと胸に溜まっていたわだかまりを、感情と共に吐き出した。
「あなたが迎えに来てよ! いつもわたしばっかり」
言い終える前に、彼女の身体は青年の胸の中で抱きすくめられていた。

「……来たよ」
水色の髪の上から、青年の声が囁く。
温かい、体温と、胸に直接響く波動が、マーシアの涙腺をますます緩めた。

ずるい……

胸から押し上がる思いが、嗚咽となって溢れ出る。

もう我慢しない。
わたしは、わたしを自由にする。

この人の温もりが、わたしに力をくれる。

マーシアは、このとき初めて、彼の腕の中で大声をあげて泣いた。
泣くことも出来なかった心を、彼女は今、解放する。


。。。こいつらヒネくれすぎだろう。。。orz
メイシンたちと比べたら、そう思わずにいられませんて。。。orz
変な駆け引きしてんじゃねぇ!さっさとくっつけっ!(爆)

自分で書いてるのにね。。。どんな落ちになるんだよコレ(爆)
ってヒヤヒヤしてました。。orz
降りてきたときのメモは大量にあって、もっといろんな事を言っていたのですが。
いっぱいありすぎてもう。。。時系列もへったくれもなく。orz
下の私も混乱するばかり。
あんたたちは。。。ぐだぐだ言いすぎっ!!ウザイ!!やめろっ!!(爆)

要するに核心はココだろ?というところを書き進めて。。この落ち。
。。。なるほどな。と、下の本体、やっと納得です。。。疲れた。orz

今気付いたんですけど。
これ。。今やってきてる大波と(以下自粛)

。。さ。次いこ、次。

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