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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光20・灼天子1

長く続く大戦の世に、送り出された儚い命。
私たちは、大きな強い光と、願いと意志から零れ落ちた、小さな欠片。

強い意志を宿した、ピーコックグリーンの鋭い瞳。
薄い金髪の短い髪に、赤いマントがよく似合う。
その後姿に、ずっと憧れていた。

彼は少女が物心つく頃には、すでに戦場に出ていた。
いつか自分も、彼と同じ場で戦えることを夢見ていた。

青年を兄のように慕っていた。
彼も少女を、妹のように可愛がってくれた。
小さな身体にそぐわない大きな剣を持ちながら、彼に剣術を教わる時間が、何よりも幸福で嬉しかった。

少女は成長して、彼と共に戦場に出るようになり、彼の傍で戦えることに喜びを感じていた。
同時に、戦場で傷つき、血を流して思った。

もっと強くなりたい。
もっと彼の役に立ちたい。
その為に出来ることは何でもやりたい。
剣の腕を磨きながらも思った。
もっと効果的な方法があるなら、それを試してみたい。

「あの手術、受けることにしたんだ」
少女がそう告げると、彼の顔色が変わった。
その手術を受けて、無事に済んだ者を、彼は今まで見た事がなかった。
「そんなのしなくていい。戦場では俺が傍にいるから。俺が守ってやるから」
「それじゃ意味がないんだよ。私が強くなって、ユーリを助けたいんだ」
「それで強くなれると思ってるのか?」
「勇気が欲しいんだ」

もっと立ち向かえる勇気。どんな敵にも怯まない心が。

結局彼は、少女の決意を曲げることが出来なかった。

少女は痛みを、快感にすり替えた。

術後の彼女は、戦場に出るたびに人が変わるようだった。
ほんの少しのかすり傷、致命傷には至らない浅手が、数を増やすたびに、少女を狂喜へと招いていく。
彼女は、それに気付いているのだろうか。
確かに強くなった。
どんなに傷ついても怯まず踏み込めるのだから。
だがその代償はあまりにも大きい。

彼はできる限り、少女の脇を固めて敵をなぎ払った。
近づけさせたくない。
かすり傷ひとつが致命傷に思えた。
これ以上傷つけて、狂わせたくはない。
彼女の正気を失いたくない。

傍で見ている彼の心が、少女の代わりに傷つき壊れるようだった。
彼女が痛みを快感に変えるたびに震えが来る。

何故そんな顔をする。
何故傷ついて笑える?

正気を保って氣が狂いそうになるのなら、彼女と共に狂ってしまったほうがましだとさえ思えた。

幼い頃から自分を慕ってくれていた、あの輝くような笑顔をもう一度見たかった。

たったそれだけの願いが、叶えられないのだろうか。

次の戦場に出る前の日。
彼はミカエルを訪れた。
「次の戦いから生きて帰れたら、自分と彼女をツインにしてください」
ミカエルは眉をひそめ、静かに言葉を返した。
「それがどういう事か分かっているのか」
正常な感覚を持たない彼女と繋がれば、恐らく、氣が狂うのは必死。
だが、今のままでも充分に、彼は気が狂いそうになっていたのだ。

いずれ彼女は壊れる。
頭の隅で警鐘を鳴らしている感覚が、彼にそう伝えていた。

彼女一人を逝かせはしない。
一人で闇に落としはしない。

あの時、もっと強く反対していれば。
こんなにまでして、強い者を作らなければならないのか。

目の前の大天使に吐き出しそうになる感情を、彼は喉の奥で堪えていた。

使い捨ての戦士。

少女は自ら、それに志願してしまったのだ。
彼女はそれに気付いていたのだろうか。
命を賭して最前線を切り開き、前へ進むだけの使命を与えられた者。
守ることは許されない。
退くことも許されない。

それでも、守ってやりたい。

ツインでもない彼女を、そうまでして守りたい彼の脳裏には、
幼かった頃の、少女の笑顔が焼きついてる。
あのあどけない、太陽のような笑みを、この記憶から消し去ってしまえるなら、
こんなに苦しむことはなかったろうに。

結局、「考えておく」という言葉しか得られずに、彼はミカエルの鎮座を後にした。


長くなってきたんで、いったん切りましょうか。。

かる~く、概略程度になりますが。メイシンとユリウスの天使時代(※天使次元の視点)のお話です。
ユリウスがね。。クリロズの端末を触らせてくれないんですよ。orz
触ろうとしたらいっぺん羽交い絞めに遭いましたからね。。(爆)
なので、自分視点の過去が見れなくて、どうしても彼視点なんです。
思い出したら、多分、吐くんでしょうな。(爆)
でもこの時のメイシン自身のカルマは、ユリウスの転生である「佐守」と出会った過去生で解消されてしまってるので、
この話聞いても、私自身は特に平気というか。。「そうだったんだ~(泣)」みたいな。(爆)
ごめんよユリウス。。orz

続きもサクサク行きます。(笑)

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