長く続く大戦の世に、送り出された儚い命。
私たちは、大きな強い光と、願いと意志から零れ落ちた、小さな欠片。
強い意志を宿した、ピーコックグリーンの鋭い瞳。
薄い金髪の短い髪に、赤いマントがよく似合う。
その後姿に、ずっと憧れていた。
彼は少女が物心つく頃には、すでに戦場に出ていた。
いつか自分も、彼と同じ場で戦えることを夢見ていた。
青年を兄のように慕っていた。
彼も少女を、妹のように可愛がってくれた。
小さな身体にそぐわない大きな剣を持ちながら、彼に剣術を教わる時間が、何よりも幸福で嬉しかった。
少女は成長して、彼と共に戦場に出るようになり、彼の傍で戦えることに喜びを感じていた。
同時に、戦場で傷つき、血を流して思った。
もっと強くなりたい。
もっと彼の役に立ちたい。
その為に出来ることは何でもやりたい。
剣の腕を磨きながらも思った。
もっと効果的な方法があるなら、それを試してみたい。
「あの手術、受けることにしたんだ」
少女がそう告げると、彼の顔色が変わった。
その手術を受けて、無事に済んだ者を、彼は今まで見た事がなかった。
「そんなのしなくていい。戦場では俺が傍にいるから。俺が守ってやるから」
「それじゃ意味がないんだよ。私が強くなって、ユーリを助けたいんだ」
「それで強くなれると思ってるのか?」
「勇気が欲しいんだ」
もっと立ち向かえる勇気。どんな敵にも怯まない心が。
結局彼は、少女の決意を曲げることが出来なかった。
少女は痛みを、快感にすり替えた。
術後の彼女は、戦場に出るたびに人が変わるようだった。
ほんの少しのかすり傷、致命傷には至らない浅手が、数を増やすたびに、少女を狂喜へと招いていく。
彼女は、それに気付いているのだろうか。
確かに強くなった。
どんなに傷ついても怯まず踏み込めるのだから。
だがその代償はあまりにも大きい。
彼はできる限り、少女の脇を固めて敵をなぎ払った。
近づけさせたくない。
かすり傷ひとつが致命傷に思えた。
これ以上傷つけて、狂わせたくはない。
彼女の正気を失いたくない。
傍で見ている彼の心が、少女の代わりに傷つき壊れるようだった。
彼女が痛みを快感に変えるたびに震えが来る。
何故そんな顔をする。
何故傷ついて笑える?
正気を保って氣が狂いそうになるのなら、彼女と共に狂ってしまったほうがましだとさえ思えた。
幼い頃から自分を慕ってくれていた、あの輝くような笑顔をもう一度見たかった。
たったそれだけの願いが、叶えられないのだろうか。
次の戦場に出る前の日。
彼はミカエルを訪れた。
「次の戦いから生きて帰れたら、自分と彼女をツインにしてください」
ミカエルは眉をひそめ、静かに言葉を返した。
「それがどういう事か分かっているのか」
正常な感覚を持たない彼女と繋がれば、恐らく、氣が狂うのは必死。
だが、今のままでも充分に、彼は気が狂いそうになっていたのだ。
いずれ彼女は壊れる。
頭の隅で警鐘を鳴らしている感覚が、彼にそう伝えていた。
彼女一人を逝かせはしない。
一人で闇に落としはしない。
あの時、もっと強く反対していれば。
こんなにまでして、強い者を作らなければならないのか。
目の前の大天使に吐き出しそうになる感情を、彼は喉の奥で堪えていた。
使い捨ての戦士。
少女は自ら、それに志願してしまったのだ。
彼女はそれに気付いていたのだろうか。
命を賭して最前線を切り開き、前へ進むだけの使命を与えられた者。
守ることは許されない。
退くことも許されない。
それでも、守ってやりたい。
ツインでもない彼女を、そうまでして守りたい彼の脳裏には、
幼かった頃の、少女の笑顔が焼きついてる。
あのあどけない、太陽のような笑みを、この記憶から消し去ってしまえるなら、
こんなに苦しむことはなかったろうに。
結局、「考えておく」という言葉しか得られずに、彼はミカエルの鎮座を後にした。
長くなってきたんで、いったん切りましょうか。。
かる~く、概略程度になりますが。メイシンとユリウスの天使時代(※天使次元の視点)のお話です。
ユリウスがね。。クリロズの端末を触らせてくれないんですよ。orz
触ろうとしたらいっぺん羽交い絞めに遭いましたからね。。(爆)
なので、自分視点の過去が見れなくて、どうしても彼視点なんです。
思い出したら、多分、吐くんでしょうな。(爆)
でもこの時のメイシン自身のカルマは、ユリウスの転生である「佐守」と出会った過去生で解消されてしまってるので、
この話聞いても、私自身は特に平気というか。。「そうだったんだ~(泣)」みたいな。(爆)
ごめんよユリウス。。orz
続きもサクサク行きます。(笑)