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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光18・燈は翳る2

三箇所に点在するエネルギーシステムは、作られた「擬似天使」によってエネルギー源を集め、施設で融合させることによってエネルギーを生み出し、無数の「研究施設」へと送り出す。
魂の核を融合させた時に生じるエネルギーを、そのエネルギー炉から「ラボ」や「箱庭」と呼ばれる施設へ送り続けている。

今回、彼らが任されたのは、その三つの施設のうちのひとつ。同じく、この「施設」に関わりのあった者が共に参加していた。
残る二つは、現在の天使エリア統括者と、その部下である技術主任が担当する。

半球状に敷かれた結界の上に、浮いたまま、ジェイとマリア・メイは複雑に見える結界のうねりを見つめていた。

彼は過去において、メイシンと共に在籍していた研究施設を壊滅させている。
だが、このシステムが存在する限り、同じような施設は乱立し後を絶たない。
施設の中核を担うエネルギー施設を叩く事は、彼の悲願でもあった。

メイシンが、彼がその施設でどれだけの思いをしてきたか、それはもう魂に刻みついて剥がせない。
ただ、そこで得たものもあった。
ただ失っただけではない。

「被験者」だった彼女を、使う立場であった彼。
彼女を救いたいと願い、その力が及ばなかった、無力感と絶望。
全てを失った、廃墟の中で湧き上がる、孤独と悲しみと愛慕。
そこから救い出すのにも、逃れるのにも、「死」という選択肢しか与えられなかった場所。

今は違う。
生きて共に在ることの喜びを、いま噛み締める。

あの時求めていたものはここにある。彼のすぐ傍に。

パライバ色の瞳が、彼の女神を振り返る。
「結界に穴を開けたら突っ込むぞ」
彼女は静かに頷いた。

記憶の底に置き去りにされていた魂の欠片を回収する。
彼女の分も、自分の分も。
そこに残してきたものを全て。

青年は、抜き身の剣をかざした。
降ろしてきた光と、攻撃魔法の陣で光を帯びている刃。
結界の継ぎ目を慎重に見つめ、そこに剣の先を触れさせる。
勢いよく切り上げると、出来た破れ目をくぐって勢いよく飛び込んだ。

風圧。
内部は次元が高いのか、結界の中心から外へと押し出される感覚がある。
すぐ目の前に迫る次の結界を、マリア・メイが貫く。
五重になる結界を交互に突破しながら結界の内側へ到達すると、施設の最深部へ向かって走り出す。

途中で障害物を幾つなぎ倒したかは数えていない。
エネルギーシステム炉に到達すると、まずシステムに繋がれているものを全て切り離す。
各施設に繋がるエネルギーライン、融合に使われていた諸々のもの。
丁寧に分離させている時間はない。
ほぼ反射的にそれと思しきものを剣を薙ぎ切断していく。

全て切り離したのは確認した。
後は各々の力量に任せるしかない。
自分の身を自分で護れなければここにいる資格もない。

「壊すから下がって!」
彼の思考をハートチャクラ越しに感知したマリア・メイが、周りに点在する全てのものに声を掛ける。
同時に、彼女の声が青年の頭に響いた。

(指示を)
(融合炉を爆発させてしまえばいい。同時に「点火」するぞ)
(了解)

完全に、中身は”美星”だな。
青年の中の”佐守”が、口元だけを歪ませて笑った。
高揚感が彼を支配しているのは否めない。

実際のやり取りは「付属物」を切り離す間に完了していた。
身体を休ませている暇も惜しい。
マリア・メイの青い髪が、炉の反対側へ回るのを確認して、剣を大きく振りかぶった。
氣と共に魔法陣と渾身の力が柄から刃先へと伝う。
ハートチャクラが繋がっている分、息を合わせるのは容易い。
二人は同時に融合炉へ剣を突きたてていた。
炉に剣を這わせつつ螺旋状に旋回しながら上昇したのは一瞬の事。
「窯」が崩壊する。
その爆発を溜めた一瞬の隙に、施設の結界の遥か外へと転移した。

遥か下方に、「施設」のあった場所が白い半円を描いて光を放っているのを、青年は鋭い目つきで見つめていた。白い光を目に映したまま、心で呟く。

(無事か)
(もちろん)
すぐに心話が届く。
青年は彼の斜め後ろに、離れて浮いている彼女を感知した。
(あちらは終わったか)
(大丈夫でしょ? あっちは百戦錬磨が行ってるんだし)
青年は、白い光を見つめるだけで答えなかった。

どれだけのエネルギーを溜め込んでいたのか。
白い光はまだ収束する気配がない。
結界を完全に取り払わなかった為か。結界を溶かしながら少しずつ大きくなっているようにも見える。
こちらにまで「延焼」することはなさそうだが。

「もう終わったよ、佐守」
すぐ横で、マリア・メイの声がした。
いつの間にか側に来ていた彼女の緩やかな髪が、エネルギーの煽る風になびいている。
その目も、白い光を見つめたまま動かない。

これでもう、繰り返すこともない。

スイスブルーの瞳が揺れているのを目の端に留めながら、青年は静かに、剣の刃を鞘に収めた。


。。。さ、先に謝っときます。。。
ごめんなさいぃぃぃっ!!!
orz
。。。うぐぅ。。。この破壊魔め。。。orz

や、
もうこれ絶対私じゃない。。書かされちった。。彼に。。orz
「自分のものでない」感覚の違和感に、しばし苛まれていた数日間でありました。うぅ。orz

お持ち帰り率(降りてきた情報量)が格段に悪かったのも、なかなか書けなかった理由のひとつ。
現場の次元の高さと、上の人が極限近くまで波動を上げちゃって、下の私がついていけなかったからだと思うのですが。

未だに詳しいダウンロードが出来ないまま、このお話を書かざるを得なかったのは、この時の心境だけでも書かないとね、先に進めない氣がしたから。
とにかく乗り越えたと言うことを、書いておきたかったんだね、彼が。

後半はもう、「さーどうするん?」と待ち状態でパソコンに向かってましたとも。その時に降りてきたものを素直に書かせていただきました。

このお話の裏話というか、リアルタイムで記録したものは、「裏庭」の「【過去ログ】リアルタイム中継」トピの前の方にあります。(※2020年現在は閉鎖されてありません)

今回、すり合わせと情報提供にご協力くださった皆様、ありがとうございました☆

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