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【星紡夜話】みなもの光14・廻り逢うため

「なんであたしはマーシアとくっついたの?」
メイシンが睨み付ける視線の先で、金髪の大天使は怪訝な顔をした。
ひとり、突然にやってきて、唐突に何を言うかと思えば、随分と根本的なことを聞く。
「何であたしを作ったの? あたしはあんたの慰み者なの? ルシフェルの代わりなの?」
大天使が口を開く前に、少女は更に畳み掛けた。
「あんたがなに考えてるか分かんない。あんたはただ、あたしを利用したかったんだ。使うだけ使って、壊れたら他のとくっつけて」
吐き出すような口上は止まらない。責める様に少女は叫んだ。
「あたしはツインなんかいないんだろ。最初から一人だったんだろ」
「……聞きたいことはそれか」
見開いていた青い瞳を伏せ、ミカエルはため息をついた。

一息つくと、サファイアの瞳をもう一度少女に向けて、大天使は静かに言った。
「”ジェイ”では駄目なのか?」
「だってあっちは最初からツインだったじゃないか!」
それが”ラファエルの子供たち”の事だと、ミカエルはすぐに察した。
「あたしは邪魔者なんでしょ」
「誰がお前を邪魔にした?」
「あんたがしたじゃないか!」
言った途端、スイスブルーの瞳から涙が溢れ出し、メイシンは慌てて顔を拭った。

自分でも何を言っているのか分からない。
マーシアのツインだったのはジェレミーだ。”佐守”ではない。
自分ひとりが放り出されたのではない。
だがここ数日の出来事で、彼女は酷い孤独感を味わっていた。
全てが自分の「片割れ」である、繊細な魂を愛している。
自分が愛する「彼」とて例外ではない。
独り、取り残されたような感覚が彼女を襲う。
少女はそれに耐えられなくなっていた。

「……何故お前たちをくっつけたか、と言ったな」
意志の宿る強い目で、ミカエルは少女を見下ろす。
「お前たち二人が、とてもよく似ているからだ」
「どこが!!」
「お前には、しおらしい所はないのか?」
「なっ……」
少女にとってはあまりの質問に、白い唇が絶句した。
「マーシアには、お前のような部分がないと思うか?」
青い瞳を見開いたまま、動かなくなった少女に、ミカエルは諭すように言った。
「お前たちは似ているんだよ。表に出ている性質が違うだけだ」

似ているだと。
どこが似ているって?

眉間にしわを寄せ、納得いかない顔で足元を睨み付ける少女の頭を見下ろして、ミカエルは更に言った。
「お前とマーシアを融合させると決めた、決定的な理由が何か分かるか?」
無言で立ち尽くす少女の頭に、静かだが心を打ち砕くような大天使の声が響いた。
「お前たち二人が、”奴”を心底愛しているからだ」

砕かれたのは、己のエゴかもしれない。
微かに気付きながらも、受け入れられない思いが、少女の胸を涙で満たした。
「なんだよ……なんだよそれ……」
下を向いたまま、再び落ちる涙を見つめて、だが今度は拭う事すらできずにいた。

融合など、合意なしには出来ない。
お前は”奴”に会うために、この融合を承諾したのだろう?
”奴”が誰を愛していようと、お前は”奴”を諦められなかったのだ。

大天使が胸で呟いた言葉は、少女の胸に届いているだろうか。
きっと届いていないだろう。
ミカエルは再び、小さく口を開いた。

「お前は自分で、”奴”を選んだんだ」
マーシアを。そして「彼」を。

「嬉しかったよ。これでお前は、やっと幸せになれると」
「なんだよそれ……何なんだよ……何でそんなこと勝手にするんだよ!」
下を向いたまま、顔を上げることもできずにメイシンは叫ぶ。
ミカエルは苦笑を押さえ込んだ。
大天使にとって、少女への返答内容は当たり前すぎるものだったのだ。
「お前を愛しているからだ」

意外なほど優しい声が、少女の頭に降ってきた。
その声に心が甘えそうになるのを、少女は嗚咽と共に懸命に堪える。
「お前を失いたくなかったからだ。戦うこと以外、何も与えてやれなかった。せめてこれくらいのお膳立ては、させてくれてもいいだろう?」

必死で嗚咽を堪えるしかなかった。
泣いているのを悟られるのすら、悔しい思いで、少女は下を向いている。
己の恥を晒しに来たようで、悔しかったが、同時に少しずつ、胸が透いてきた。

感情の高ぶりが収まってくると、彼女は一番聞きたかった事を、震える声で口にした。
「……あたしは本当に、最初から一人だったの?」
「戦闘天使には、基本的にツインはいない」
静かだが、淡々とした声で、大天使は答える。
ああ、と、少女は深いため息をついた。

戦うために生まれた。
愛するためのツインなど要らない。

分かっているのに、何故こうまでして、自分は愛を求めるのだろう。
過去、大天使に”愛情”を示してもらった記憶などない。
聞きたくなどない。けれど、今は聞かずにいられなかった。
小さく。蚊の鳴くような声で、メイシンは声を絞り出した。

「あたしのこと……愛してた?」
「ちゃんと上を向け」
予想外に降ってきた言葉に、メイシンはしばし戸惑った。
涙を拭い、恐る恐る見上げた先に、金色の優美な髪をオーラのように纏い、少女が初めて見る慈雨の瞳で、微笑んでいるミカエルがいた。
「愛してるよ」

ああ。
今、全部の箍(たが)が外れたよ、ミカエル。

堰を切ったように、メイシンは大天使の広い胸に抱きついて、泣き崩れた。

心を砕き、生み出したひとつの欠片。
お前は俺の魂を分けた、俺の一部。
やっと帰ってきた。この懐に。

少女の小さな身体を、高い背を曲げて抱え込み、ミカエルは呟いた。
「おかえり」

大天使の腕の中で、胸が熱くなるのを、少女は覚える。
鋭く胸を貫くような愛を感じながら、メイシンは自身の愛の出所を知った。

彼が、純粋な「愛」であるからだ。
彼から生まれた自分が、愛を求めるのは。
それはきっと、この人の根底からの願いでもある。

全ての闇を昇華し、その愛を広めよ。

お前なら出来る。


。。。なんか最後らへん、おかしくないですか? ミカエル降りてます?(爆)

この回のチャネリングはとにかく会話が多かったんで。。というか、メイシンが一方的にギャーギャー言ってたんで、背景描写とかゼロです。(笑)
あら。。。パソコンがオーバーヒートで打ち込みが思うように行かない。。
とりあえず、アイスノンを下に敷いて応急処置しました。( ̄▽ ̄;)
頭冷やせ、メイシン。(笑)

。。この後のエネルギー交換は半端じゃなかったので、下の私、しばらくお腹壊してました。。。ミカエル、相変わらず強烈。(爆)

えぇと。。。次はあの。。。「女神様」でいいんでしょうか?( ̄▽ ̄;)

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