「……なんで今日はあんたなの?」
メイシンは、目の前に座る優しげな青年の、アクアマリンの瞳を覗き込んで言った。
少女の怪訝な顔に尻込みしつつも、ジェレミーは答える。
「用事があるらしくて……」
ふーん。と、少女は鼻で返事をする。
同時存在するのに、「人格」まで分けることないじゃない。
自分のことは棚のうえに上げて、少女は不貞腐れていた。
理由も話さず、置いてけぼりにされている感じが気に入らない。
不機嫌そうな少女を見て、ジェレミーはにっこりと微笑んだ。
「今日は特別に、ひとつ憶えたらその都度デザートが出るよ」
「……なにそれ」
少女は思わず吹き出してしまった。
子供騙しな言い回しだが、アクアマリンの青年にかかると、何故かやんわりと言いくるめられてしまう。
少女が笑ったのを見て、青年も嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今日は攻撃魔法から始めようか」
白い廃墟に、明るい陽光が差し込む。
淡く舞い踊る粉塵の影を、パライバトルマリンの瞳が虚ろに見つめていた。
先日、少女が見つけた「神殿」の前に、ジェイは一人佇んでいる。
彼女がこれを見つけたのは、きっと必然だったのだろう。
過去の切ない記憶と共に、再び向き合うこととなった廃墟。
青年は、一度深く目を閉じ、そして強い意志と共に、碧の瞳を開いた。
(マーシアの様子はどうですか)
彼が心話を繋いだ相手は、穏やかに答えた。
(カルマをひとつ解消しましたよ。今ならメイシンと再統合しても大丈夫でしょう)
青年は、伏し目がちに緑の大天使の言葉を聞いていた。
今の彼女なら、ここに来てくれるだろうか。
(彼女をこちらへよこしてもらえますか)
ふっと、大天使は笑ったようだった。
(ちょうど彼女も行きたがっていたところですよ)
言い終えると、大天使の方から心話が途切れた。
間を置かず、目の前の空間が歪み、白いドレスの女性が現れる。
透けるような白い肌の上に、波打つ青い髪が、腰まで伸びている。
優しげなスイスブルートパーズの瞳が、青年の碧の瞳を見上げた。
その姿は以前より、少し大人びた印象を受ける。
柔らかく波打つ青い髪が、風に揺れてきらめく。青年は思わず、しばし見とれ言葉が出なかった。
「……変わったね」
やっと出てきた言葉に、マーシアははにかんだ。
氣を取り直すように、青年は白い廃墟を見上げる。
「ここを、再び機能させたい」
マーシアは、振り返って「神殿」を見上げた。
彼女も離れた場所から、メイシンを通してこの場所を感知していた。
メイシンが、この神殿に懐かしさを感じているのを知って、彼女は内心驚いていた。
彼女は直接知らないはずの場所だったからだ。
やはり宿命付けられた、同じ魂。
「出来るか?」
青年が、念を押すように彼女を見つめる。
「……多分。あなたと一緒なら」
少し不安げに、彼女は答えた。
昔のように再び、ここで会うことになるなど、誰が想像していただろう。
もう二度と、ここに来ることはないと思っていた。
ここで負った過去の傷は悲しく、彼女の胸に夜の帳を下ろし続けていたから。
青年は、うつむく彼女に手を差し伸べた。
「俺が支える」
差し出された青年の手のひらを見つめ、マーシアは瞳を潤ませた。
……わたしがあなたを、支えきれなかったのに。
マーシアは、それでも微かに頷いた。
青年の大きな手のひらに、そっと白い指を重ねる。
その細い指を、青年の手は固く握り締めた。
白い手を引いて、青年は神殿の奥へと歩き始める。
崩れた天井から、光の帯がいくつも伸びる廃墟の中を、二人は静かに進んだ。
ここが崩れてしまった理由。
二人の胸に、美しかった頃の神殿の記憶が、再び浮上し始めていた。
なんか複雑に絡み合ってるんだ。。。彼らの過去って。orz
このパズルピースをどうやって繋げていけば~。。と、頭を抱えながら、お話の構成を考えているのでありますよ。
マーシア、メイシン、佐守とジェレミー、それぞれが、一回きりじゃなくて、入れ替わり立ち代り、どっかの過去生で一緒だったみたいでね~。。。orz
で、今回のは、マーシアと佐守くんです。。。佐守くんが会ってたのは、メイシンだけじゃなかったんだ~。。。
私がびっくりだよっ!!orz
神殿が崩れちゃった理由?
。。。アレでいいのかな。。。いいんだよね。。。(ドキドキ)
ちゃんと教えてくれよ~お二人さ~ん。。(笑)
次回。間違いなく二人の過去。( ̄▽ ̄;)