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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・みなもの光

【星紡夜話】みなもの光5・愛探す者

癒しの大天使から放たれる光は、徐々にその出力を上げていく。
マーシアはただ、その光に身をゆだねていた。

今まで欲しかった物を、今ようやく手に入れる。そんな気持ちで。

その光を、最初は恐れを持って見ていた。
自分がその光に傷つけられるのだと、不安と恐怖に苛まれながら。
だが今は違う。
その光が、一番信頼する人から放たれていることに、彼女は安堵を覚えていた。
この人なら大丈夫だと。

強烈な光の波に、少女が安らかな表情を浮かべているのを見て取ると、ラファエルはひとたび、彼女から離れた。

空気を裂く音が耳をかすめて、少女の青い瞳に閃光が走った。
眩しくて閉じた瞳を再び開けたとき、彼女の目の前に、美しい金の甲冑を身にまとった、緑の瞳の大天使が立っていた。
大天使は無表情で、右手の剣を振り上げる。
薄皮一枚を切るように、白い剣先が彼女の胸をかすめ、白い服を裂いた。
剣圧で青い草の上に倒れこんだ少女を、大天使の剣は容赦なく斬りつける。
ただそれは紙一重で白い肌の脇へと滑り込み、少女に直接当たることはなかった。

少女の顔すれすれに突き立てられた剣を、彼女は見ることもしなかった。
ただ、彼女が見ていたのは、大天使のエメラルドの瞳だけ。
青い瞳が穏やかなのを見て取ると、ラファエルは口元に笑みを閃かせて言った。
「私が怖い?」

少女はゆっくりと首を振った。
怖くはなかった。今までならば確実に悲鳴を上げ泣き崩れているような仕打ちを受けているにもかかわらず、少女は何故か怖いと思わなかった。

きっと、この人だから。

すると、少女が見ていた大天使の姿が、ぐにゃりと歪んだ。空間がひずむような感覚にめまいを覚えて、思わず目をつむる。
次に開けたとき、目の前に立っていたのは、黒髪に黒い瞳の青年だった。

……アレクセイ。

とっさに、彼女は彼の名前を口走った。
尖ったあごに、無表情な細い瞳。
そう。彼は笑わない。

感情のない人。

笑いもせず、怒りもせず、ただいつもわたしを求めてきた。
それがとても怖かった。
感情から、彼の思いを読むことが出来ず、それが少女を混乱と恐怖へと追い込んだ。
彼は愛の対象ではなく、いつも不安と恐怖の対象だった。

だが、ラファエルが降ろした光のせいだろうか、彼を見ても今までのように恐怖の対象としては感じなかった。

今は怖くはない。
そして、彼が何を求めていたか、今なら分かる。

マーシアは自分のハートチャクラを、アレクセイのそれと繋げた。
少女の側から、彼の方へとエネルギーが流れていく。

過去に彼と出会ったとき、彼女はただ一方的に奪われただけだと思っていた。
彼は何をしても、顔色ひとつ変えない人だった。
だから分からなかった。

マーシアは自分から放たれる光の量を、少しずつ上げていく。
ラファエルが彼女にそうしたように。

どれだけ彼にエネルギーを流し込んだろうか。
彼の中に、少女の感情の波が押し寄せる。
彼女の感情を受けるうち、彼の胸の中で微かに変化が起きているのを、チャクラ越しに少女は感じていた。

彼が欲していたもの。
それは、彼女の持つ「感情」だった。

感情の遺伝子を切り離して生まれた彼が、種族の絶滅を防ぐために取った手段が、彼女から感情の遺伝子を奪うことだった。

訳も分からず、彼の元に連れてこられた当時の少女は、ただ不安と恐怖に苛まれながら、その状況に身をゆだねるしかなかったのだ。
自分をどう思っているのか、どんな思いで見ているのか、感情のない彼から読み取ることなど出来なかった。
それが一番の恐怖だった。

今なら、こう思う。
彼は彼女を感じたかったのだ。

マーシアから流れる感情の波が強まり、彼女を感じることを快感だと学んだとき、アレクセイは、初めて微笑した。

嬉しかった。
もっと笑ってほしかった。
もっと喜びを感じてほしかった。
初めて見せた微笑に涙した。

彼のほかにも、感情を欲するものは多くいる。
彼女はひっきりなしに襲われ、感情を奪われ続けていた。
だが、アレクセイが感情を覚え始めた時、その状況に変化があった。

彼は、少女に群がる輩を、何のためらいもなく斬り捨てた。
そんなときの彼に、感情があったろうか。

「奪われたくないから」
彼は言った。
「もっとあなたの愛を感じたいから」

少女は胸が熱くなり、涙を堪えきれず、アレクセイに抱きついた。

ざあっと、耳元で空間の歪む音を聞いた。
驚いて顔を上げると、緑の木々が水面に青い影を落とす泉のほとり。
少女が抱きついていたのは、エメラルドの瞳の大天使だった。

「あなたの過去が、変わりましたよ」
いつも垣間見せる、穏やかな笑みを浮かべながら、ラファエルは言った。

……変わった?
あの恐ろしかった過去が変わったというのを、信じられない思いで、少女は大天使を見上げていた。
「あなたが、彼を受け入れたからですよ」
がんばったね、というように、ラファエルは少女の藍い髪を優しく撫でる。
そうしてラファエルは再び、光を彼女に送り始めた。
アレクセイに流し続けて、疲れ果てていた少女のハートが、温かい光で満たされていく。
根源からの光に包まれながら、大天使は優しく言った。

「あなたはね、愛されていたんですよ、ずっと」

その言葉を聞いた途端、少女のスイスブルーの瞳から、大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。

大天使の胸で泣き崩れる少女を、癒しの手はしっかりと、抱きしめ続けていた。


マーシアさんの過去の記憶、第2弾です。
私が独身の頃からずっと持ってた、トラウマの根源だったみたいですよ。これ。orz
ただその。。。ストレートに表現できずにどうしようかと思ってたけど、結構すんなり書けた。(笑)
そんなわけで、(どんなわけで?)心象スケッチ(by宮沢賢治)のようなお話になりました。
ちょっと違うか。(^_^;)

甲冑姿のラファ先生、かっこよかったっすよ。
この人になら何されてもいい~。。。。。。。。っていう話は、後で裏話で書きます。。多分。(^_^;)
「台詞が少ないお話」記録を更新したような気がします。(笑)
なんで台詞が少なかったか。

だって。。。台詞を忠実に入れたら、ホントにコレ18金(違)になっちゃ(以下自粛)

お。カウンターがもうすぐ1000番を超えますな。
キリ番踏んだ方、自己申告してくださーい。

ひょっとしたら、メイ&ジェイの遠隔ヒーリングが届くかも♪
。。。。いや、MAXアガペーかもしんない。。。orz
キリ番踏んじゃった時間から数えて、次の23時~23時30分まで、神殿で光を降ろして届けてもらうようにお願いしましたので、楽しみにしてくださ~い☆

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