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【星紡夜話】カスタリアのほとり28・夏至

ヒーリングポットに入り、メイシンはまず、パライバトルマリンの碧い石を、自分の胸から取り出した。
佐守の碧い魂は、彼女の胸の中で、少し大きくなっているように見えた。
両手で、愛おしくそれを包み込みながら、癒しの大天使に差し出す。
ラファエルは、微かに頷きながら、その石を受け取った。

肉体を持たない魂は、培養ポッドに入れられる。
「欠損をしていればかなり時間がかかりますが、彼は随分回復しているようだから、肉体の蘇生はすぐのはずですよ」
ラファエルは説明しながら、大きな水晶の柱のようなポッドに、碧いトルマリンを入れ、中心に浮かぶのを確認する。
「まず彼の肉体を元に戻します。分割の件はその後で、ね」
作業を終えて、緑の大天使は少女が横たわるヒーリングポッドの傍に立つと、念を押すようにそう告げた。
「今度は、あなたの石を取り出しますよ」
大天使の真摯な瞳に頷くと、メイシンは自分の胸に手を入れ、水色に光る石を取り出した。
夏の、雲ひとつ無い澄み渡る空のような、ブルートパーズ。

自分の魂を間近に見るのは、初めてだったかもしれない。
自分はもっと違う色をしていると思っていた。ずっと憧れていた。透き通る聡明な青。
灯台下暗し、かなぁ。。
少しだけ自嘲すると、青い石をラファエルに差し出した。
しっかりと、彼女の魂を受け取ると、エメラルドの大天使は微笑んだ。
「心配しないで、ゆっくり眠っていなさい。全て私が責任を持って処置します」
その言葉を聞き届け、メイシンは頷いて、ゆっくりと瞳を閉じた。

ポッドの蓋を閉じ、緑の大天使は、ため息をついた。
左手の、ブルートパーズをじっと見つめる。

やはりあなたは、どんな姿になろうと、あなたなのですね。

彼が赤子の頃から癒し続けた、はかない笑顔の少女を思い起こして、エメラルドの瞳が、ほんの僅かに揺らいだ。

何故そこまでするのですか。
求めるものには、何をしてでも癒しを与えよう。
だが、手を差し伸べることすらしない者へ、何故自分の魂をも与えることができよう?

そう思うのは、天使の性分かもしれなかった。
けれどその性分を超えてまで、己の愛を与え続けた存在へと、彼の意識は流れていった。
この少女の姿に重ねて見えるその存在に、彼はボソリと呟いた。

これは、私の仕事じゃない。
あなたの領分だよ。。。。。

ルシフェル。

一日の間もなく、パライバトルマリンの魂には、青年の肉体が現れ見えた。
まだ意識の戻らないその身体は、培養ポッドからヒーリングポッドへ移される。
医療スタッフの手際を見ながら、ラファエルは人知れずため息をついていた。
。。。。さて。

パライバトルマリンの肉体が、エネルギー的にも遜色なく回復したと見て、大天使は椅子から腰を上げた。
医療用の白衣を着せられ、ヒーリングポッドに眠っているのは、ダークブラウンの短い髪をした、背の高い男性。
ヒーリングの供給が終わったのを感じ取ったように、彼の瞳はゆっくりと開かれた。

魂の色と同じ、パライバトルマリンの、碧い瞳。
緑の大天使が見下ろしているのを察知し、重い背中をゆっくりと起こす。

身を起こし、こちらを見上げる青年をラファエルは見据えた。
大天使は自分の胸から、ブルートパーズの石を取り出す。

「あなたは本当に、彼女の魂を二つに分けられますか?」
差し出された青い石を見つめながら、彼はすぐ、首を横に振った。

この美しい輝きを、割ることなど出来ない。

自分は甘えすぎていた。
また彼女を追い詰めてしまったことを、彼は心の底から悔いた。
彼女の魂を分けることなど、彼は考えてもいなかった。彼女の提案に、ただ驚くばかりで。

彼女は、自分が知っている彼女ではない。
今回の件で、彼女の愛が予想以上に深いものであることを、彼は身をもって知った。

「彼女は本来、とても献身的なんですよ。だから”メイシン”の生を選んだとき、その魂は二つに分かれた」
淡々と、ラファエルは語る。
後悔の念に晒される青年を見下ろし、手を出すように言うと、ブルートパーズの石を、彼の手に委ねた。
「しばらく持っていなさい。あなたの胸の中で、抱きしめてあげなさい」

右手の青い宝石を、彼は愛おしく握っていた。
透き通る、遠浅の海のような、天の精霊を写す青。

「あなたは、これまで以上に彼女を守ってあげなければいけませんよ」
決意を促すような、押しのある声に、彼は顔を上げた。
エメラルドグリーンの瞳が、真摯に彼を見つめている。
「。。。。出来ますか?」

右手の宝石を硬く握り締め、碧の瞳は大天使のそれをまっすぐに見つめ返した。

「命を懸けて」


だからね、そんな簡単に魂割っちゃいけないんです。(笑)
私も最初、惑わされました。これしかないかーと思って。でも、最善の結果へと、ちゃんと導かれるんだね。すっかり出し抜かれました~(笑)。ラファ先生の機転に、感謝感謝☆

メモの時点ではまったく無かった、ラファ先生の独り言。
ブログに書き始めたら、いきなりラファ先生の意識が降りてきたみたいで。なんかすごい思い詰めた感じでだーっとしゃべってたのがコレ。

>何故そこまでするのですか。
>求めるものには、何をしてでも癒しを与えよう。
>だが、手を差し伸べることすらしない者へ、何故自分の魂をも与えることができよう?
>これは、私の仕事じゃない。
>あなたの領分だよ。。。。。ルシフェル。

まさかここで、ルシフェルの名前が出てこようとは。orz
いや、少し前から、マーシアの過去生を洗い出そうとしてたときから、何故か会いたいと思ってたんだよね、ルシフェル。

いや、三次元の今の私は、もう自分が犠牲になろうなんて、これっぽっちも思っちゃいませんが。そういう時期ありました。最近はマーシアの影響がまた強くなってるみたいで、生協のにーちゃんの「コレも注文しませんか~?」の迫力に、ちょっと押され気味ですけども(笑)

丁度この話が降りてきたのが、夏至。
陽極まって陰となす日。メイシンが陽なら、マーシアは陰かな。
そういうわけで、夏至です。これからはマーシアの課題に触れていくことになりそうです。
なんか、ラファ先生の台詞を聞いてるとね、これからが本番な氣がしてきた。orz
全くまったく。。。( ̄▽ ̄;)

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