ピーコックグリーンの魂は、彼女の胸の中で、切なく叫ぶ。
(メイ。。。メイ、愛しているよ)
大丈夫。心配しないで。
私も愛しているよ。
あなたが大好きだよ。
慰め、励ましながら、彼の語りに耳を傾け続ける。
。。。俺は何をしていた。
俺は彼女に、何をしてきたのだ。
こんな事になるまで、
自分のしてきたことに気付かなかったのか。
奴の部屋をこじ開け、彼女のデータをかき集めた。
奴の資料をむさぼり読んで愕然とした。
。。。。。こんな幼い時分から。
彼女の受けてきた本当の苦しみが、そこには記されてあった。
彼女は、奴のモルモットだった。
奴が死んだ理由で、俺はチームを移動させられた。
冗談ではない。
今、彼女と離れるわけには行かない。
このままでは、奴の後任も「研究所」から来るはずだ。
情報操作をした。
彼女を戦場から引き離すことに躍起になった。
何故自分は、こんなにも必死になっている?
彼女と離れることに耐えられなかった。
あの歪んだ笑顔が、彼女と自分との距離をますます広げていく。
───そうか。
俺が本当に魅せられていたのは。
初めて、彼女に惹かれる理由に気付いた。
奴を手にかけた時の、嫉妬にも似た感情が蘇ってくる。
人として、男として、俺もこれほど狂っていたとは。
可笑しくてたまらなかった。
自分をあざ笑う、渇いた笑い声が、虚しく胸に響いた。
膨大な、奴が集めた「収集品」を読み続けた。
自分がしてきたことを、己に知らしめるために。
彼女を救う方法を、そこから見出すために。
彼女はたった一人で、闇に落ちる感覚と戦っていたのだ。
その力を抑えるどころか、むしろ強化されて日に日に追い詰められ、
自分を見失う状況と、ずっと一人で向き合っている。
個人的な理由で、初めて彼女に声をかけた。
「頼みがある」
「命令だろう」
「違う」
彼女はほんの僅かに眉をひそめた。
「俺と結婚してくれ」
ほんの一瞬、琥珀色の目を見開いたように見えた。
だがすぐに、その目はゴミを見るような色に変わった。
「面白い冗談だ」
心底くだらなそうに、彼女は答えた。
直後、胸ぐらをつかまれ、息が詰まる強さで
彼女の目の高さまで頭を引き寄せられる。
彼女が人を殺すときの、あの冷えた笑みが、そこにあった。
「今度言ったら殺してやる」
手応えはあった。まだ間に合う。
彼女が完全に闇に落ちる前に、少しでも引き上げなければ。
時間を見つけては、彼女のところに通い続けた。
その度に、手荒な歓迎を受け続けた。
それでもいい、少しでも闇から気がそれてくれれば。
彼女に埋め込まれたチップを通して、
状況は奴らにも届いているだろう。
いつものように首を絞め、無数の切り傷をつけて彼女が立ち去った後、
突然奴は現れた。
「これは大変だ。治してあげましょう」
思うような結果が出なくて困っている。
奴の後任で医療チームに配属された”医者”の顔には、
そう書いてあった。
「。。。いや、結構」
壁を背に座り込んでいた身体を何とか起こす。
酸欠の頭を、気力で持ち上げて奴を見上げた。
「自分の傷は、自分で治せる」
「おや、そうですか」
奴はあざ笑った。
俺が殺した「奴」の微笑に、そっくりだった。
「無茶な人だ。彼女に近づきすぎると、命の保障がありませんよ」
殺人狂には近づくなと言わんばかりに。
血が滴り続ける、自分の胸に手を当てた。
彼女が本気なら、俺など一瞬で仕留められる。
なのに、この急所の外し方はどうだ。
これが、奴を困らせている理由だった。
「辛くなったら、いつでも来てください。きれいに治してあげますよ」
言い捨てると、奴は静かに歩き去った。
それは、彼女と同じ道を辿らせるということか。
この「システム」を構築した組織自体に、疑問を抱いた瞬間だった。
いっその事、彼女と刺し違えようかとすら考えた。
彼女に殺されるなら本望だ。
自暴自棄になりかけて、ため息をついた。
───いや、このままで終わらせるものか。
この時自分を支えていたのは、俺が嫌う奴と同じ類の、
ギラギラした執念のようなものだった。
。。。他人の過去生とはいえ、自分絡みだと胃が痛くなるのよさ。orz
佐守くん、マゾですか?(笑)絶対Mの人でしょアナタ。
ていうか、「命令だ」って言ったほうが早かったんじゃないの?>プロポーズ
( ̄▽ ̄;)
。。。アホですか?私。。。orz
さて、そろそろ終盤なるか。
こういう話は一日で終わらせたいよね~。。(^_^;)