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【星紡夜話】カスタリアのほとり21・藍玉

三次元の本体が、それと出会ったのは全くの偶然だった。
否、タイミング的には、必然。

「石が外れかかってる人が倒れてる」
と教えてくれたのは、けぶるような金髪の歌姫だった。

生命の「核」である胸の石が外れかかっていて、
ぎりぎりのところでエネルギー供給がなされているけど、本当にギリギリだから、植物人間のような感じ。

「動きたくても動けないんじゃないかな? 誰かを呼んでるけど、私じゃないみたい」

歌姫の説明を聞いても、最初は、それが何なのかすら分からなかった。
自分であるのか、他人であるのかすら分からなかった。
最初に見たそれは、痩せて干からびた木の根のように見えた。

「歌ったら、少し回復したみたいで、人の形に戻ってきたよ」

歌姫がエネルギー供給してくれたことに感謝した。

とにかく、確かめたい。
メイシンにとっては、ほんの少しの手がかりでもすがりつきたい気分だったろう。

三次元の本体たちが打ち合わせ、上の彼女たちは落ち合うことになった。

向かったのは、宇宙を漂う花畑。
赤い塵が漂う、空虚な場所。
ここは。。。いつか彼女が、砕け散った場所。
金髪の歌姫が、座標を見失わないように、「彼」を花で囲んでくれていた。
足元に横たわる人物の前で、メイシンはそっとひざまづく。

「彼」の胸から外れ、鎖骨辺りで引っかかっている石。
ピーコックグリーンの、南の海を思わせる、透き通った青緑。

「石に話しかけてみて」
言われて、メイシンはそっと呟いた。

「あなたは誰?」
(。。。おまえはだれ?)
石が答えたので、彼女は名乗った。
「メイシン」
少し間を置いて、石は答えた。
(。。。やっと来てくれた)

ずっと待ってた。
パライバトルマリンの色をした石はそう言った。

ずっとここにいたのか。
ここは、彼女が散華した時の宇宙が、その時のまま広がる世界。
彼はここで、ずっと探していたのか。
ずっと待っていたのか。

スイスブルーの瞳に、涙がにじんだ。

ごめん。ごめんね。わたし生きてられなかったんだ。
わたしは限界だったんだよ。
あなたのところに帰るなんて考えられなかった。

(それは俺のせい。
俺のせいでそうなった。
だから俺は愛される資格がない)

メイシンの表情が凍った。

(愛される資格がない)

それが、彼が今まで過去を欠片も見せられなかった理由だったのか。
横たわる身体の前で、少女はうな垂れた。

好きか嫌いかなんて、思う術もなかった。
その事が、彼をこれほど傷つけていようとは。

彼をこんなにしたのはわたしだ。
ずっと気付かずに放っておいたわたしだ。
彼を否定したことで、どれほど彼が苦しんでいたか気付かなかった。
わたしが愛していることが、彼には伝わっていなかった。

「。。。でもね」
うな垂れたまま、メイシンは呟いた。
「あたし、あんたに会いたかった。あの時は言えなかったけど、今度生まれ変わることが出来たら、絶対会って言おうって。。。」

何度も、何度も繰り返し。
めぐり会う日を夢見ては繰り返し。
胸の奥で温め続けていた言葉。

この人は、命を懸けて、私を救ってくれた人。

「。。。ありがとう」

愛しているよ。

嬉しかったんだよ。私も救われたんだよ。
ごめんね。 言えなくてごめん。

わたしはずっと探してたんだよ。
今度こそ会って伝えようと。

愛しているよ。 本当に愛しているよ。

だからわたしの愛を受け取ってください。

もう絶対にどこにも行かない。
もう絶対に離れたりしないから。

大粒の涙と共に、メイシンは誓いの言葉を搾り出した。

「。。。もう絶対に、離さないからね。。。佐守」

歌姫の暖かい歌声が、二人の場を優しく包み、照らし続ける。

少女は静かに、パライバトルマリンの石を、両手でそっと持ち上げた。
手のひらで光る藍玉。
胸に押し当てるように抱きしめると、光は増して、彼女のハートと一つになるようだった。
石を失った身体は、砂山が崩れるように、光の粒子となって崩れ去る。

彼の古い身体が、傷ついた過去が、光となって消えていくのを見ながら、メイシンは石を自分の胸に入れた。
胸の中で熱くなる石を、ずっと、ずっと抱きしめる。

彼はわたしの中にいる。

わたしの中にいれば、離れることは二度とない。


びっくりしました。まさかこんな形で出会うなんて。
ただ、ありがとうと伝えたいです。

なんでこれのタイトルが「藍玉」なのか。
パライバトルマリンの和名を探したら、「藍玉」だったからです。
単純に生きてます。(笑)

でもなんか、違う色に想像しちゃうよね。。

(※2020年2月21日追記※ 歌姫=なにみえ遠足スタッフだったりゅーらさんの事です。ちなみに、私は遠足生ではありません。4期生に申し込んだけど「天使系エネルギーが強すぎて波動が合わない」という理由で入れませんでした)

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