「。。。だめだ! 思い出しちゃだめだ!」
彼が望んだのは、こんな事ではなかった。
ただ彼女が幸せであれば、それで良かったのに!
琥珀の瞳は焦点が合わず、青ざめた肌は小刻みに震えている。
その震えが大きくなるにつれ、彼女の体が発光し始めたのに、彼は気付いた。
彼は必死で、彼女を抱きかかえた。
抱えても抱えても、彼女の存在は光と共に薄らいでいく。
「だめだ! 消えちゃだめだ! メイ!!」
死に物狂いで抱きしめても、彼女の体の重みを、すでに感じられなくなっていた。
「メイ!! 愛してるよ!! 信じてくれ! 愛してるから!!」
だから消えないでくれ!!
森がざわめいた。
いつもと違う風の感触に、マーシアは身震いした。
ラファエルと共に過ごしていた彼女は、15歳ほどの少女に成長していた。
大天使のエメラルドの瞳も、風を仰ぐ。
「メイシン。。」
彼女に共鳴したのか、マーシアの体が光に包まれ始めた。
「。。ラファエルさま。。」
戸惑い、助けを求めるように、少女は大天使を見上げた。
うずくまり、震える少女を、穏やかな瞳で見つめながら、ラファエルはひざまづいた。
「心配要りませんよ」
優しくも、力強いエメラルドの瞳が、少女の心を少し安堵させた。
それでも、消えそうになる感覚に、恐怖を覚える。
光が、蛍火のように空へ散り行くと共に、彼女の体の密度が下がる。
透けるほど、その存在が不確かなものになったと知ったとき、マーシアは大天使にしがみついた。
「行っておいで。。マーシア」
不安を、包み込むように、ラファエルは少女を抱きしめた。
暖かい癒しの光に包まれながら、少女は最期に、エメラルドの瞳を見上げた。
「ラファエルさま。。。ありがとう。。」
大天使の腕の中で、少女は光となって弾け散った。
消え行く光を、最後のひとつまで見届けた後、ラファエルは静かに眼を閉じた。
。。。行っておいで、私の娘。 あなたの還るべき場所へ。
「。。。あ。。。。あ。。」
星のように、蛍火のように煌き、降りかかる光を浴びながら、青年は震えた。
消えてしまった。
この腕に確かにいたのに。 消えてしまった!
アクアマリンの瞳は震え、溢れ出す涙を止められず、青年は両手を床に叩きつけた。
いけなかったのか。 この幸せに甘んじることは。
このまま。。
「このままでは。。。いけなかったのですか、ラファエル!」
気配を感じて、振り向きざまに青年は怒鳴った。
「彼女が望んだのです」
背後に立っていた大天使は、静かに答えた。
彼女が。。。何を望んだって?
自分の前から消えることを望んだのか?
自分はまた、彼女に見捨てられたのか?
そもそも、最初から、彼女を愛する資格などなかったのだ。
そっと、傍で支え続けるだけで十分だったはずなのに。
悔恨へと、自分を堕とし込んでゆく青年を見つめながら、ラファエルは告げた。
「愛しなさい」
大天使の言うことが理解できず、青年は目を見開いた。
「分かりませんか? 彼女は『あなた』に会いたがっていたのですよ」
(。。。そんなの佐守じゃない!)
彼女の声が、胸に再現されていく。
青年は震えを覚えた。
自分は、受け入れられない存在だ。
彼女を苦しめ続けた張本人だ。
彼女が、自分に会いたがっているなど、到底思えなかった。
「恐れる必要はないでしょう? あなたの『全て』を、彼女は望んでいる」
自分の全てとは何だ。
遠い昔に、自分が捨て去ったものなのか。
心の闇に閉じ込めていた『自分』を、彼女が望んでいる?
到底信じられず、腫れた目を上げてラファエルを見上げる。
エメラルドの瞳が、静かに頷いた。
「行ってあげなさい」
行って、愛してあげなさい。
あなたの存在の、全てをかけて。
「。。。はい」
アクアマリンの瞳は、先ほどまで少女がいた床を見つめた。
その穏やかな瞳の色は、静かな決意に満ちている。
床にそっと手を付き、彼はゆっくりと、海の瞳を閉じた。
お前の望みが、 俺の全てだ。
。。。。それが、お前の望みなら。
金茶色の髪が、白い姿が、光に包まれ、砕け散っていった。
ぎゃー!! 消えちゃったー!!
って、この時はちょっと大変でした。三次元でも。。(^_^;)
今回書いたお話と、実際の過去生と、その後の様子がね、同時に降りてくるんですよ。。。
あっちもこっちも同時進行で、メイもジェイもラファ先生も一緒にしゃべってぐっちゃぐちゃ(爆)
ぐあーっ!! 同時にしゃべんなーっ!!
テメーら三次元的に事を進めろーーーーっ!! (ムリっ)
てなわけで、全部メモるのに、4時間以上かかりました。。。orz
いや、全部かけてないんだろうな。。
さーいよいよです。腹は据わりましたか?(笑)
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