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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・カスタリアのほとり

【星紡夜話】カスタリアのほとり14・消失

「。。。だめだ! 思い出しちゃだめだ!」
彼が望んだのは、こんな事ではなかった。
ただ彼女が幸せであれば、それで良かったのに!

琥珀の瞳は焦点が合わず、青ざめた肌は小刻みに震えている。
その震えが大きくなるにつれ、彼女の体が発光し始めたのに、彼は気付いた。
彼は必死で、彼女を抱きかかえた。
抱えても抱えても、彼女の存在は光と共に薄らいでいく。
「だめだ! 消えちゃだめだ! メイ!!」

死に物狂いで抱きしめても、彼女の体の重みを、すでに感じられなくなっていた。

「メイ!! 愛してるよ!! 信じてくれ! 愛してるから!!」

だから消えないでくれ!!

森がざわめいた。
いつもと違う風の感触に、マーシアは身震いした。
ラファエルと共に過ごしていた彼女は、15歳ほどの少女に成長していた。
大天使のエメラルドの瞳も、風を仰ぐ。

「メイシン。。」
彼女に共鳴したのか、マーシアの体が光に包まれ始めた。
「。。ラファエルさま。。」
戸惑い、助けを求めるように、少女は大天使を見上げた。
うずくまり、震える少女を、穏やかな瞳で見つめながら、ラファエルはひざまづいた。
「心配要りませんよ」
優しくも、力強いエメラルドの瞳が、少女の心を少し安堵させた。
それでも、消えそうになる感覚に、恐怖を覚える。
光が、蛍火のように空へ散り行くと共に、彼女の体の密度が下がる。
透けるほど、その存在が不確かなものになったと知ったとき、マーシアは大天使にしがみついた。

「行っておいで。。マーシア」
不安を、包み込むように、ラファエルは少女を抱きしめた。
暖かい癒しの光に包まれながら、少女は最期に、エメラルドの瞳を見上げた。
「ラファエルさま。。。ありがとう。。」

大天使の腕の中で、少女は光となって弾け散った。

消え行く光を、最後のひとつまで見届けた後、ラファエルは静かに眼を閉じた。

。。。行っておいで、私の娘。 あなたの還るべき場所へ。

「。。。あ。。。。あ。。」

星のように、蛍火のように煌き、降りかかる光を浴びながら、青年は震えた。

消えてしまった。
この腕に確かにいたのに。 消えてしまった!

アクアマリンの瞳は震え、溢れ出す涙を止められず、青年は両手を床に叩きつけた。

いけなかったのか。 この幸せに甘んじることは。
このまま。。
「このままでは。。。いけなかったのですか、ラファエル!」
気配を感じて、振り向きざまに青年は怒鳴った。
「彼女が望んだのです」
背後に立っていた大天使は、静かに答えた。

彼女が。。。何を望んだって?

自分の前から消えることを望んだのか?
自分はまた、彼女に見捨てられたのか?

そもそも、最初から、彼女を愛する資格などなかったのだ。
そっと、傍で支え続けるだけで十分だったはずなのに。

悔恨へと、自分を堕とし込んでゆく青年を見つめながら、ラファエルは告げた。

「愛しなさい」

大天使の言うことが理解できず、青年は目を見開いた。
「分かりませんか? 彼女は『あなた』に会いたがっていたのですよ」

(。。。そんなの佐守じゃない!)

彼女の声が、胸に再現されていく。
青年は震えを覚えた。
自分は、受け入れられない存在だ。
彼女を苦しめ続けた張本人だ。
彼女が、自分に会いたがっているなど、到底思えなかった。

「恐れる必要はないでしょう? あなたの『全て』を、彼女は望んでいる」

自分の全てとは何だ。
遠い昔に、自分が捨て去ったものなのか。
心の闇に閉じ込めていた『自分』を、彼女が望んでいる?

到底信じられず、腫れた目を上げてラファエルを見上げる。
エメラルドの瞳が、静かに頷いた。
「行ってあげなさい」

行って、愛してあげなさい。
あなたの存在の、全てをかけて。

「。。。はい」
アクアマリンの瞳は、先ほどまで少女がいた床を見つめた。
その穏やかな瞳の色は、静かな決意に満ちている。
床にそっと手を付き、彼はゆっくりと、海の瞳を閉じた。

お前の望みが、 俺の全てだ。

。。。。それが、お前の望みなら。

金茶色の髪が、白い姿が、光に包まれ、砕け散っていった。


ぎゃー!! 消えちゃったー!!
って、この時はちょっと大変でした。三次元でも。。(^_^;)

今回書いたお話と、実際の過去生と、その後の様子がね、同時に降りてくるんですよ。。。
あっちもこっちも同時進行で、メイもジェイもラファ先生も一緒にしゃべってぐっちゃぐちゃ(爆)

ぐあーっ!! 同時にしゃべんなーっ!!
テメーら三次元的に事を進めろーーーーっ!! (ムリっ)

てなわけで、全部メモるのに、4時間以上かかりました。。。orz

いや、全部かけてないんだろうな。。

さーいよいよです。腹は据わりましたか?(笑)