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【星紡夜話】カスタリアのほとり4・訪問

広場で剣を振るっていたメイシンに、そっと近づく気配があった。

振り返ると、明るい茶色の癖毛に、アクアマリンの瞳に新緑を写した、優しそうな青年が立っている。
「あ~。。」
あんた、守護天使だ。「ひつき」の。

メイシンが言葉にせずつぶやくと、青年はくすりと笑って手を差し出した。
「ジェレミーだよ。よろしくね」
「はぁ、どーも。。」
なんとなく反射的に、差し出された手をメイシンは握った。

「実はその「ひつき」に頼まれたんだけど、君をクリロズに連れてってほしいって」
「クリロズ?」
いま「ひつき」が夢中になって行ってる所かぁ。。(夢中じゃないってば)
ニヤリと笑って、メイシンは清緑の瞳を見上げた。
「いいよ。面白そうだし」
「そう? じゃあよろしく」
もう一度、ジェレミーは手を差し出す。
メイシンがその手を握ったとたん、二人を取り巻く景色が変わった。

宇宙。
暗闇の中、無数の星の煌きに囲まれ、二人はその空間に浮かんでいた。
琥珀色の視線の先に、小さな浮島があった。緑に囲まれた島の中心に、白い洋館が見える。
「これがクリロズ?」
瞳を凝らして島を見つめる少女の顔を振り返り、守護天使は微笑んだ。
「じゃあ行くよ」
守護天使の背中に、白い翼が広がった。
手を引かれ、漆黒の星空を飛び、島に向かって「落ちていく」。
結界がある。
メイシンは一瞬身を硬くしたが、少しの衝撃を感じただけで、するりと「壁」をすり抜けた。

美しい花が咲き誇る庭を飛び越え、洋館の入り口に、二人は着地した。

それからのメイシンは、せわしなかった。
一階のサロンを覗き、二階の「本体」の自室を覗き、
「やっぱサロンがいいや」
と結局サロンに戻って、ジェレミーと二人でしばしくつろぐ。

「そういえば、裏に造ってるっていう舞台は出来たのかな?」
と言ったかと思うとすぐさまガーデンに飛び出していき、
館の裏に回って、完成間近のステージを眺めた。
「すっげー!」
野球場のドームほどもある立派な舞台を見上げ、声を上げる少女に、守護天使は苦笑した。

ここでじぇいど♪さんの出版記念ライブが行われるのだが。。
「そういや、食べ物は持参なんだよね?」
くるり、とジェレミーを振り返って、メイシンが呟いた。
「そうだったと思うけど。。」

ジェレミーが返事を終わらせる前に、二人はカスタリアの家へ戻ってきていた。
「あれ? もういいの?」
「うん。ご飯作りたいから」
そういうと、メイシンはキッチンでご飯を握り始めた。
炊き立ての米と格闘しながら、いびつなおにぎりがたくさん出来上がる。
不器用だがやる気だけはあるらしく、次はサラダを作ろう!と、ボウルを出し、野菜を切り始めた。
その横で、ジェレミーはミキサーを使ってスープを作る。

「さ、出来た」
ジェレミーは呟いて、白いおにぎりと、トマトとレタスのサラダ、かぼちゃとほうれん草のポタージュをテーブルに並べる。
手際の良い青年をぼんやり見つめている琥珀の瞳に気付いて、ジェレミーはにっこり微笑んだ。
メイシンは慌てふためく。
「あ~。その。。。ありがと」
どういたしまいして、と微笑みながら、ジェレミーは少女に椅子を勧めた。


はい、今から怒涛の更新を始めまーす(笑)
溜まってるもの書いていかないと、前に進めないことに気付きました。(爆)
ちょっと前の話題になっちゃうけど、続きもんなのでざざっと書きます。

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