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風の小径 星紡夜話会員記事暫時全体公開 星紡夜話・桜花

【星紡夜話】桜花1・解放

淡い桃色の花弁が、優美にひらめき、舞い散る。
桜の巨木の下で、漆黒の少女は立ち尽くした。

なぜ、自分がここにいるのか分からない。

新緑が目に鮮やかな芝の上、薄紅色の絨毯を敷き詰めるように、花弁を降り撒く桜のそばは、自分には似合わない。

闇のような黒髪、男物かもしれない洗いざらしの白いシャツ、すらりとした足にぴたりと寄り添う黒いパンツ。そして黒革のショートブーツ。
手には剣があった。使い慣れた銀の柄が手になじむ。
その白い顔には、琥珀色の瞳。穏やかで美しい景色の中で、その姿は明らかに異質だった。

彼女は、言葉にせず、ミカエルを呼んだ。
一瞬にして、まばゆい光をまとった、優美な姿の大天使が、目の前に降り立った。
手には、すでに抜き身の剣を握っている。
大天使は、面白そうに口元をゆがませた。
「闘いたいのか」
その問いに、彼女は一瞬答えられなかった。

「・・・わからない」
搾り出すようにつぶやくと、彼女はミカエルに向かって剣を突き立て、突進した。
不敵な笑みを浮かべたまま、大天使は剣を持った右手を軽く翻しただけで、彼女の剣を弾く。
彼女は怯まなかった。
何度も剣を翻し、果敢に打ち込む。それでも彼女の剣は、まるで玩具のように跳ね返される。彼女には目の前にいる大天使が、全く微動だにしない巨壁のように感じられた。

不意に、ミカエルが口を開いた。
「遊んでいるのか? 本気で切り込んでみろ」
遊んでいるわけではない。これで十分本気のつもり。。。
「”つもり”ではな」
少女が心で呟いた声を聞いて、大天使は真顔になった。
「では言い直そう。お前が死に物狂いにならなければ、俺は答えられない」

死に物狂いか。
だが、死に物狂いになったことなどない。
ただ、何も考えられなくなるだけ。
目の前の敵を倒すまで。何も感じず、何も覚えず、ただ倒れるまで刃を向け続ける。
心に映るのは、真っ白いものだけ。
その白さは、黄金の光の粒となって、彼女からあふれ出た。
光に包まれ、その光ごと、ミカエルに向かっていく。
強大な、しかし柔らかく大きな大天使のオーラとぶつかった。
刃をすり合わせながら、ミカエルが嬉しそうに口元を歪ませる。
「やれば出来るじゃないか」
ただ無心に、だが奥底の感情を叩きつけるように、彼女は剣を振るい続けた。

何度切り込んだろうか。彼女が渾身の力で振り下ろそうとした右手を、ミカエルは不意に掴んだ。
はっとして、彼女は我に返ったように顔を上げた。
少女の琥珀色の瞳は、悲しみの感情に揺らいでいた。その目に、涙が見当たらないのが不思議なほど。
その顔を覗き込む、ミカエルの静かな瞳は、胸の奥底に慈愛の温もりを感じさせるものだった。
静かな一瞬を、桜の花弁がゆっくりときらめきながら、二人の間に落ちていく。

やがて、こらえきれなくなったように、彼女が口を開いた。
「・・・・・ミカエル」
静かな瞳が、彼女を見つめ直した。そのとき、
琥珀の目が、怒りとも皮肉とも言えない笑みに満ちた。
「・・・あんた、サイッテーだな」

睨みつけながら、彼女はミカエルの手を振り払った。


ひぃぃぃぃっ!!( ̄∇ ̄;)
ミカエル先生を「サイテー」呼ばわりだよ~っ(自爆)
しかし十数年のブランクは、さすがにキツかった。
自分でも何かいてるかわかりません。。。|||l_| ̄|○l|||
変な文章、さらっと受け流してね。

続きはたぶん、明日書きます。

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